スーパーや八百屋で売られているパイナップル。その上にぴょこんとついているとげとげのヘタを、皆さんはどうしているだろうか。当然のごとく捨てている人も多いだろうが、驚くべきことに、そのヘタから機械の部品を制作するチームがマレーシアに存在する。今回は、そうした本来ならごみとして捨てられるようなものをよみがえらせ、ドローンのフレームに再利用した事例をご紹介する。
マレーシア・プトラ大学のモハメド・タリク・ハメド・スルタン教授率いるプロジェクトチームは、パイナップルのヘタを原材料にドローン部品を開発した。プロジェクトの目的は、マレーシアのフールランガット地区の農家の収入を安定させ、農産業の全体を活性化させることだ。パイナップルのヘタによって製造しているのは、ドローンのバッテリーやプロペラを固定する胴体の部分だ。
パイナップルのヘタを使った部品は合成繊維を使ったドローンのに比べて、強度があり、軽く、廃棄も容易だという。廃棄物であるヘタを使用するため、材料が安価に調達できることも魅力だ。
低コストで製造できることに加えて、バッテリー以外の部品は、土に還る生分解性もを併せ持つ。もしもドローンが破損して畑に落下してしまった場合でも、土壌に与える影響を最小限に抑えることができるのだ。この部品を使ったプロトタイプのドローンは、約1,000メートルの高さまで飛行し、約20分間空中に滞在する能力があるという。
研究チームの次の目標は、画像センサーなど、重量のある部品を積める大型のドローンを制作し、作物を空中から点検したりと、農業用途へ展開することで農家の労働負荷を軽減することだという。
2017年にこのプロジェクトが開始される前は、年に一度の収穫時期を過ぎると、パイナップルのヘタはすべて廃棄されていた。プロジェクトチームが廃棄物であるヘタを購入することで、労働時間を増やすことなく農家の収入を増やすことができる。特に2020年からは新型コロナウイルスの蔓延により、農家の経済面での打撃が大きい。そうした大変な状況で、農産業界全体に良いサイクルを生む手助けをすることを、プロジェクトメンバーたちは念頭に置いて開発を続けている。
日本でも今後、農作物を動物から守るための監視用ドローンや、肥料散布用ドローンが普及促進されていくと言われている。農業人口が減少している中、テクノロジーでその労働負荷を下げることは、農業という産業が健全に続いていく中で極めて重要なポイントだ。そして、今後は農業に限らずあらゆる産業において、環境負荷の小さい素材を使っていくことは欠かせない要素になっていくだろう。
【参考サイト】Malaysian team turns pineapple waste into disposable drone parts
【参考サイト】Pineapple waste material converted into drone parts
【参考サイト】農林水産省 生産局総務課生産推進室 農業分野におけるドローン活用の事例
Edited by Megumi Ito