コティは、2020年11月時点で世界最大のフレグランス企業となった、アメリカの化粧品メーカーだ。バレンシアガやクロエなどのフレグランスも展開している。同社はこれまで、香水を製造する際に、サトウキビやテンサイなど天然の原料から作ったエタノールを使用してきた。しかし、これらの植物を栽培するには大量の土地、水、肥料が必要で、環境への影響が大きい。たとえばサトウキビの大規模栽培は、森林破壊、土壌劣化、生物多様性の減少につながることがある。
そんな中、コティは2021年3月、香水を製造する際の環境への負荷を減らすために、工場で排出されたCO2を回収してエタノールを生成し、製品に使うことを発表した。この方法であれば工場のCO2排出量を減らすことができ、香水の製造に必要な水や土地も少なくて済むため、環境保全に大きく貢献する。同社は2023年までに、フレグランス製品の大半に、CO2を回収してできたエタノールを使うことを目指すという。
この取り組みは、世界でも最先端のガス発酵技術を持つアメリカのバイオテクノロジー企業「LanzaTech」と協力して行われる。LanzaTechは、微生物発酵を用いて製鉄所などの排ガスからエタノールを製造する技術を開発し、そのエタノールからバイオジェット燃料を生成したり、持続可能なプラスチック容器を開発したりしてきた。コティの科学者とは2年間にわたって共同で、香水に適した持続可能なエタノールを開発したそうだ。
コティは、スイスの環境コンサルタントである「Quantis」と製品のライフサイクルアセスメント(ある製品・サービスのライフサイクル全体の環境負荷を定量的に評価する手法)を実施したところ、CO2を回収して生成したエタノールを使ったほうがはるかに環境負荷が小さいことがわかったという。コティによると、エタノールは香水を製造する際に最も多く購入している原料であるため、この挑戦は同社の持続可能性へのコミットメントを示す大きな機会となりそうだ。
LanzaTechのCEOであるジェニファー・ホルムグレン氏はプレスリリースで、「地中から取り出した炭素を一度で使い捨てるという発想を、過去のものにしたい」とコメントしている。エタノールは香水の香りを長く肌に留めてくれるが、せっかくならそのエタノールも持続可能なものを選んでみてはどうだろうか。
【参照サイト】 COTY to partner with Lanzatech to pioneer new sustainable fragrance production | coty.com
Edited by Erika Tomiyama