いま、全国の空き家数は増加傾向にある。総務省統計局によると、2018年度の日本全国の空き家数は846万戸と、5年前と比較して26万戸増加しており、過去最高を更新し続けている。
「古い家を解体したい」と思ったとき、その費用に頭を悩ませる人が多いかもしれない。思い入れのある家が使われなくなってしまうことに心を痛める人もいるだろう。では、その家を解体する代わりに、寄付してみてはどうだろう。愛着のある家が、貧困家庭の子どもたちの学びの場となり、改修され、ゆくゆくはその子たちによって所有されるとしたら、寄付をするという選択肢が視野に入るのではないだろうか。
米アラバマ州バーミンガムにある「Build UP」という高校では、貧困家庭の子どもが建設について学べる、6年間のフルタイムプログラムを提供している。プログラムには座学もあれば、実際の建設現場で有給インターンシップに参加する機会もある。さらに、子どもたちが古い家を二世帯住宅にリフォームする取り組みも行っており、このときに人々から寄付された家が活躍するのだ。子どもとその家族はプログラムの途中から、この改修された家に住むことができる。
Build UPのプログラムがユニークなのは、ここで学び終えた人たちが、トレーニングの一環で改修した家を購入できる点だ。プログラムを終えて、建設業界で高収入を得るようになったり、自分のビジネスを始めたり、大学に進学したりした人たちは、無利子の住宅ローンを利用して家を購入し、資産を築くことができる。二世帯住宅であれば、一部を貸して家賃収入を得ることもできるので、彼らにとって大きな力になるだろう。
Build UPのCEOであるマーク・マーティン氏は、Fast Companyによる取材で、貧困状態にある人たちが、家を所有するまでの道筋を作ることの重要性を説明している。国の家賃支援や、低所得者向けの公営住宅といった取り組みの多くは、家を借りるという側面に焦点を合わせているが、Build UPはそうではない。マーティン氏は「この国の、人種間の貧富の差をなくすためには、所有という観点から公平性を考えないといけません」と話す。貧しい人たちが、スラム街のような場所で家を借りる様子を見てきた、同氏の気持ちは強い。
Build UPはじきに、2校目を同バーミンガム地域内に開校する予定で、さらにオハイオ州クリーブランドにも学校を作るという。綺麗に改修された家が増え、未来に希望を抱く若者がたくさん住むようになれば、地域も活気づくだろう。若者の未来は、地域の未来。Build UPはそういう信念のもと、次世代の人材を育てている。
【参照サイト】 Build Up – Home
Edited by Erika Tomiyama