香港に拠点を置く海洋保護団体「オーシャンズアジア」の報告書では、2020年に15億6千万枚もの使い捨てマスクが海に流出したと推定されている。私たちが新型コロナウイルス感染症対策として着用しているマスクは、適切に処分されなければ、野生生物を脅かす存在になるかもしれない。
そんな中、オランダのグラフィックデザイナーであるマリアンヌ・デ・フロート・ポンス氏は、地球に優しく、なおかつコロナ禍で人々に笑顔を届けるマスクを販売している。彼女が作っているのは生分解性100%のマスク「Marie Bee Bloom」で、使い終わった後に土に埋めると花が咲くというものだ。マスクには花の種が埋め込まれており、アスター、コレオプシス、ギリアといった花が咲くという。
生分解性のマスクというと、何でできているのか気になる方もいるだろう。鼻と口を覆う部分はわら紙、紐は羊毛、紐の長さを調整する花形のストッパーは卵パックからできているという。さらに、紐を通す輪の部分は水溶き片栗粉でくっつけており、マスクに付いているロゴには生分解性のインクを使っている。まさに、生分解性100%という点を徹底したマスクだ。
マリアンヌ・デ・フロート・ポンス氏はこのマスクについて、ウェブサイトで「地球も、ミツバチも、自然も、人も喜ぶマスク『Marie Bee Bloom』を販売します。世界に花を咲かせましょう!」と述べている。ミツバチと一緒に、花が咲くのを心待ちにしたい。
Marie Bee Bloomは2021年4月現在、オランダ、ベルギー、ドイツへの配送に対応しており、ゆくゆくは他の国への配送にも対応していくという。マスクの価格は5枚入りが15ユーロ(約1900円)で、10枚入りと15枚入りも販売している。このマスクは水溶き片栗粉を接着剤にしているため、通常のマスクよりも繊細にできており、取り扱いには注意が必要だ。
マリアンヌ・デ・フロート・ポンス氏のところには、注文がたくさん来るようで、マスクの制作を手伝ってくれる人を募集しているほどだ。長引くマスク生活に不便を感じることもあるが、このマスクがやがて花になると思えば、少し気が晴れるのではないだろうか。数粒の種が「さあ、咲くよ」と囁くのが聞こえてくるようだ。
【参照サイト】 Marie Bee Bloom – biologisch afbreekbare mondkapjes met bloemenzaadjes
Edited by Erika Tomiyama