デザインで循環性を実現。トミーヒルフィガーとエレン・マッカーサー財団のサーキュラーデニム

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現在のアパレル産業は、様々な課題を抱えている。例えば、アパレル産業は人間の活動によって排出される二酸化炭素量排出量の10%を占めており、2番目に水を多く消費する産業だと言われている。また、大量生産・大量消費のビジネスモデルにより毎年世界で生産された衣料品の6割以上は廃棄されているのだ。

しかし、世界的に有名なアパレルブランドがサーキュラーデザインやサーキュラーなビジネスモデルへの転換を次々と始めているのも事実だ。

2021年3月、米の大手アパレルブランドであるトミーヒルフィガーが、サーキュラーエコノミーを推進するエレン・マッカーサー財団と提携し、ブランド初となる「サーキュラーデザインデニムコレクション」を発表した。

image via Tommy Hilfiger

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このコレクションでは、耐久性、素材の安全性、リサイクル性、トレーサビリティを念頭に置き、5点のパンツと2点のデニムジャケット、合わせて7つのアイテムが開発された。サーキュラーエコノミーの原則に基づき、100%オーガニックの生地や取り外し可能なボタンを使用し、金属製リベット(強度を支える鋲)のかわりにバータック(補強縫製)を採用。全ての金属ジッパーと革パッチもなくした。このように、デザインのフェーズで設計方法や素材の使い方などを再考することで、従来の8割の廃棄をなくすことが可能だという。

また、一枚のジーンズをより長く使ってもらうため、ポケットには正しい洗濯の仕方やお手入れ方法の説明が記載されている。所有者が使い終わった後のジーンズの修理方法、寄付やリサイクル方法まで書かれており、顧客へもしっかりと働きかけようとする姿勢が見られる。

トミーヒルフィガーのCEOであるMartijn Hagman氏は今回の公式プレスリリースで、「世界をリードするファッションブランドとして、私たちにはサーキュラーエコノミーへの移行を推進する責任があります。そして、そのためにはバリューチェーンを再考する必要があります。私たちはエレン・マッカーサー財団と協力し、デザインと製造の両方で我々の限界を押し広げます。今回の取組は、完全に循環する製品をつくるための一歩に過ぎません。」と述べる。

image via Tommy Hilfiger

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今回のコレクションは、トミーヒルフィガーが2019年8月に参画した、エレン・マッカーサー財団のプロジェクト「The Jeans Redesign」の一環であり、同社は他にもサーキュラーエコノミーの実現に向けて、様々な取組を行っている。

例えば、これまでに同社はデザイナーの8割以上にサーキュラーデザインの原則についてトレーニングを行い、サーキュラービジネスモデル「Tommy for Life」をローンチした。これは、顧客やパートナーから使い終わった商品を回収し、修理して再び販売し、製品の寿命を延ばす新しい取組みだ。さらに、従来と比べ少ない水とエネルギーの使用量で、200万点以上のローインパクト(環境への影響が少ない)デニムを生産。これにより同社は初めて100%リサイクルコットンを大規模に使用したデニム関連の大手企業となった。

トミーヒルフィガーの親会社であるPVH Corp.も、環境へのポジティブな影響を増やし、バリューチェーン全体に関わる100万人以上の従業員の生活を改善するための、15の優先事項からなるフォワードファッション戦略を実行している。同社は40カ国以上で4万人以上の従業員を雇用し、年間収益が99億米ドル(2019年)の大企業だ。こういった著名な企業のサステナブルな取り組みが、アパレル業界全体への波及効果や、変革のきっかけとなることを期待したい。
Edited by Motomi Souma

【参照サイト】TOMMY HILFIGER LAUNCHES FIRST CIRCULAR DESIGN DENIM COLLECTION IN PARTNERSHIP WITH THE ELLEN MACARTHUR FOUNDATION
【関連記事】トミー ヒルフィガー、2030年に向けた循環性と包括性に関する24の目標を発表

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