コロナ禍で地域経済の活性化を目指す、チェコのデジタル通貨「Corrent」

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日豪の研究チームが2021年4月に発表した論文「誰が新型コロナの給付金を使ったのか?日本の家計簿アプリから得られた結果」によると、日本政府が2020年に支給した1人10万円の特別定額給付金のうち、定義にもよるが、ほんの6~27%が消費として利用されたという。残りは貯蓄に回ったと見られている。

世界中の国が新型コロナによる経済打撃を受ける中、チェコの人口約1万人の町であるキヨフでは、2021年4月26日から5月25日までの30日間、支給するお金を消費に回し、コロナ禍で打撃を受けた地域経済を活性化させることを目的としたデジタル通貨「Corrent」を発行するパイロットプロジェクトを実施している。Correntという名前は、「Coronavirus(コロナウイルス)」と「Currency(通貨)」を掛け合わせたものだ。

同プロジェクトでは、申し込みを行った最大2000人のキヨフ市民が、それぞれ400 Correntを受け取れる。なお1 Correntは、1チェココルナ(約5円)と同じ価値を持つ。Correntを受け取った市民はヘアサロン、フォトスタジオ、自動車学校、靴屋などで支払いをするときに、金額の半分を自分で負担し、半分をCorrentで支払えるという仕組みだ。そしてCorrentを受け取った事業者は後日、チェココルナに両替することができる。

チェコ産業貿易省のサポートを受けて行われるこのプロジェクトには、いくつか優れた点がある。それはCorrentをいつまで、どこで、何に使えるかを、通貨を発行する側が設定できることだ。Correntには有効期限があるため、支給されたお金が貯蓄より消費に回りやすく、経済を回すことにつながる。また、キヨフ市内のみなどCorrentを使える地域を限定できるため、打撃が大きい地域に的を絞って支援できる。さらに、Correntを使える店やサービスも限定できるため、Correntで高級車を買うといった想定外の使用も防ぐことができるのだ。

同プロジェクトを管理する「I, Foundation, s.r.o.」のCEOであるペペ・ラファージュ氏は、 Correntのことを「ドローンマネー」と呼ぶ。定額給付金の直接給付や日本銀行の国債買い入れなど、ヘリコプターで市中に現金をばらまくように、政府や中央銀行が国民にお金を渡す政策を「ヘリコプターマネー」と呼ぶことがあるが、ドローンはヘリコプターよりもターゲットを絞ってお金を渡せて、経済を活性化できるという意味が込められている。

チェコでは2020年10月から2021年4月半ばまで、半年以上にわたり非常事態宣言が続き、その後少しずつ規制が緩和されている状況だ。その影響で営業停止を余儀なくされた事業者も多く、いかに経済を再始動し、困難な状況にある町や市民を支援するかが課題となっている。 Correntの仕組みは、地域がコロナ禍から回復するためのグッドアイデアかもしれない。パイロットプロジェクトの結果がどう出るか楽しみだ。

【参照サイト】 Corrency – a plan for the recovery of the local economy

Edited by Erika Tomiyama

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