伝統技術を守りながら歴史を伝える、南アフリカの図書館

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地球温暖化が進み、自然環境の破壊が深刻化している今、環境に配慮されたプロダクトが増えてきている。店頭に並ぶ商品だけでなく、ビルや住宅、公共施設など、多くの建築物に、サステナブルな素材が使われるようになってきている。

建物から持続可能な社会をつくる――。その変革の一端を担うのが、南アフリカ・ヨハネスブルグにある『タボ・ムベキ大統領図書館』。アフリカの歴史を伝えるために建てられたこちらの図書館は、地元の素材を使い、伝統的なアフリカの穀倉の建築技術を用いてつくられている。

8つの円柱が特徴のこのドーム型の建物は、「知識を貯める穀倉」という意味を込めて穀倉を模倣して建築された。この施設の存在によって、穀物の生産が拡大し、栽培や収穫サイクルが順調にいくようにと、願いが込められているのだ。伝統的な建築物の形でありながら、屋上に太陽電池パネルを設置したり、建物の温度を調節する地熱暖房システムを導入したりするなど近代技術と組み合わせてつくられている。さらに、地元で調達された泥や木材、地元の石からできた人造大理石の建材を使ってつくられており、可能な限りカーボンフットプリントを減らすことが目指されているという。

図書館には、博物館や研究センター、セミナー室、読書室、講堂、一時的な展示スペースなどに加えて、カフェや女性のエンパワーメントのための空間も併設。古代および現代のアフリカの歴史に関する学びの場でありながら文化交流もできる、地域の拠点にもなる場所だ。

同図書館を手掛けたのは、アジャイ・アソシエイツ事務所。創設者であるイギリス系ガーナ人の建築家・デイヴィッド・アジャイ氏は、米ワシントンDCにある「国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館」など、これまで世界中で数々の著名な建築物を手掛けてきた。2020年にアジャイ氏は、王立英国建築家協会(RIBA)が優れた建築家に対して与える「ロイヤル・ゴールド・メダル 2021」を受賞している。

近代と伝統、両方の技術を使って、歴史を後世に残していく『タボ・ムベキ大統領図書館』。多様な人々が集まる地域のハブとなるだろう。こういった建物がどんどん広まっていくことを期待したい。

【参照サイト】SOUTH AFRICAN PRESIDENTIAL LIBRARY TO BE BUILT SUSTAINABLY WITH ANCIENT TECHNIQUES
【参照サイト】Thabo Mbeki Presidential Library
【参照サイト】RIBA「ロイヤル・ゴールド・メダル 2021」建築家 デイヴィッド・アジャイが受賞

Edited by Tomoko Ito

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