森林火災を啓発する、アルゼンチンの「燃えない新聞紙」

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南米アルゼンチン・パタゴニア地方で、2021年3月に大規模な森林火災が起きていたことはご存知だろうか。2万5,000ヘクタール以上もの森林が焼け、数百人の住民が家や仕事を失ったこの火災は、これまでに同国で起きた森林火災の中でも最も被害が大きいものだった。

アルゼンチンの新聞社・Noticias de la Comarcaはこの出来事を受け、森林火災予防についての啓発活動として、耐火性のある紙を使用した「燃えない新聞」を世界で初めて発行してみせた。紙面は、アルゼンチン国内で起こっている森林火災の現状や、予防策を大きく扱っており、その取り組みのユニークさから、同キャンペーンは国外からも注目された。

一見すると「燃えない新聞」を発行することは、ただのパフォーマンスのようで、はたして森林火災対策につながっているのかという疑問を持った人もいるだろう。計画的な土地利用や伐採、あるいは消火時の対応シミュレーションなど、もっと堅実な打ち手があるようにも思えてしまう。

しかし、このキャンペーンのポイントは、森林火災の発生自体を食い止めるために、人々の意識向上も行う必要があるということだ。Noticias de la Comrca社によれば、世界で発生している森林火災の95%近くは、たき火や、火入れ(焼畑農業)、放火、たばこなどの人為的要因により発生しているという。啓発活動は効果を計りづらいものだが、根本原因に手を打つためには妥当策だといえる。

「燃えない新聞」が人々の手に渡ると、SNSでの拡散が巻き起こった。このキャンペーン自体がTVニュースやWebメディアなどの多くの媒体で取り上げられたことにより、アルゼンチンの森林火災の悲惨さを多くの人々が知るきっかけになったのだ。

同キャンペーンに合わせて、アルゼンチンの消防財団法人la Fundación Bomberos de ArgentinaのWebサイトでは、ボランティアとして活躍する消防士の備品などを購入するための募金活動を行っており、「燃えない新聞」が発行されてからの寄付金額は500%も増加したという。

きちんと始末されなかった新聞紙一枚の発火からも、大規模な森林火災は起こり得る。森林火災が地球環境にもたらすマイナスの影響やその大きさを今後もより多くの人々が理解し、それを伝え合い、予防していく気運を高めていけば、防げる火災が必ずあるはずだ。

【参照サイト】la Fundación Bomberos de Argentina
Edited by Kimika

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