海に浮かぶごみが、漁師の収入源に。コロナビールのプラスチック釣り大会

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私たちが日々使っているプラスチック製品。便利な反面、街中に捨てられたごみが水辺に流れ出し、海洋汚染の原因になっていることもある。2016年の世界経済フォーラムで発表された調査報告書によると、海中はすでに1億5,000トン以上のプラスチックごみで汚染され、毎分ごみ収集車1台分のペースでごみの量が増え続けているという。

自然分解されないプラスチックは、海洋に漂う中でマイクロプラスチックと呼ばれる小さな破片となり、魚や哺乳類などの体内からも検出されている。人体への影響はまだわかっていない部分も多いが、いずれにしても海からプラスチックごみを取り除き、これ以上増やさないことが大切だ。

そんな中、世界的に有名なコロナビールでおなじみのCorona Méxicoが、海洋プラスチック問題へのアプローチとして、ユニークな釣り大会を開催した。参加した地元の漁師に課されたのは、より多くの“プラスチックを釣る”ことだ。

“Plastic Fishing Tournament”と名づけられたこの大会は、メキシコのシナロア州南部にある、太平洋に面する港町マサトランで行われた。マサトランの漁場でもプラスチックごみの問題が深刻化し、漁師たちは漁に出てもプラスチックごみばかりで魚が釣れない苦境に追い込まれていた。

そこで大会では、参加した漁師たちが回収したプラスチックごみを、魚と同じ値段で買い上げることを提案。30チーム、80人の漁師が出場し、合計約3トンのごみを回収した。地元紙Mexico News Dailyによると、1位は319kg、2位は212kg、3位は200kgのプラスチックを集め、上位3チームには賞金も授与されたという。

さらに、回収されたプラスチックは地元のリサイクル会社México Reciclaに引き渡され、漁に必要な道具へと変えられた。

漁師たちはこれまで、プラスチックごみが網にかかってもそのまま海に戻していたが、大会をきっかけに、リサイクル会社と連携してプラスチックごみの回収を開始。捨てられたプラスチックごみから定期的な収入を得られる仕組みが生まれたのだ。

大会に参加した漁師の一人は「私を苦しめていたプラスチックが、今では副収入をもたらしてくれています」と穏やかな表情で語り、恵みを与えてくれる海をプラスチックごみから守る決意を新たにした。Corona Méxicoは、同様のトーナメントの開催を他の港町でも予定している。

アムステルダムでも、運河に流れ込んだプラスチックを集めるボートツアーなどの取り組みが行われているが、今回の「窮地に立たたされた漁師の新たな収入源を生み出す」という視点は画期的だ。

漁師にも、地球にもプラスの影響を与えてくれる大会が各地に広がり、海の汚染を食い止める一手となることに期待したい。

【参照サイト】The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics|The World Economic Forum
【参照サイト】Corona México
【参照サイト】México Recicla
Edited by Kimika

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