天然、人工に次ぐ第3の選択肢に?エシカルな「海底ダイヤモンド」とは

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大切な人へ、頑張った自分へ……人生の節目の贈り物に、ダイヤモンドのジュエリーを選ぶ人は少なくない。きらびやかなイメージのあるダイヤモンドだが、実は、その採掘時には多大な環境負荷がかかっていることをご存じだろうか。

長い年月をかけて形成される天然ダイヤの原石は、地下150~700kmの深さに眠っている。地中深くに掘った穴から辺りの石を吸いだし、洗浄、そのなかから原石を見つけ出すのが、一般的な天然ダイヤモンドの採掘プロセスである。この際、穴を掘りやすくするために、採掘場周辺の木々が伐採されてしまうという問題がある。

また、地下の石を地表に吸い上げる機械からは大量のCO2が排出されており、吸い上げた大量の石を洗浄するために使用される水の量も膨大だ。インペリアル・カレッジ・ロンドンのImperial Consultantのレポートによると、ダイヤモンドを採掘するために排出されるCO2量は1カラットあたり57~160キログラム。さらに、消費される水の量は0.48~7.3立方メートルにもなるという。

加えて、ダイヤモンド採掘の現場で一部の労働者たちが過酷な労働を強いられ、搾取されている例もみられる。

こうした環境的・社会的懸念から、近年、人工の合成ダイヤモンドに注目が集まっているが、合成ダイヤモンドの生成時にも膨大なエネルギーが発生していることから「合成のほうが良い」と簡単に言い切ることもできない。

そんななか、天然採掘ダイヤモンドでも人工ダイヤモンドでもない「第3のダイヤモンド」をジュエリーコレクションに採用したブランドがある。それが、2015年に創設されたジュエリーブランド「Azlee」だ。ブランド創設者のベイリー・ズワート氏が手掛けた「オーシャンダイヤモンド」コレクションに使用されているのは、いずれもダイバーたちが海の底で見つけた原石である。

Azleeが使用しているのは、Ocean Diamonds社の海底ダイヤモンドだ。従来の陸上や海洋で地下深くまで掘削(くっさく)する大規模な採掘法とは異なり、海底の堆積物のなかからダイヤの原石を探し出す小規模な方法で発見されるのが特徴である。

そもそも、ダイヤの原石は、地球内部の深部で、炭素原子に高熱と高圧力がかかるなかで生成される。先述の採掘方法では、それらの原石が火山の噴火活動で地表近くへ運ばれたときの道筋(一次鉱床)に穴を掘っている。一方、ダイヤの原石を含む地層が雨風で削られ、長い時間をかけて川から海へと運ばれていった堆積物のなかからも原石を見つけられる場合がある(二次鉱床)。前者に比べると発見できる原石の数は多くないが、こうした堆積物の中からであれば、地下深くまで掘削しなくとも原石を拾い出すことができるのが利点だ。

海底の堆積物から原石を探す際、多くの企業では、船を使って海底の砂利を大量にすくい、ふるいにかけるようにして選別していく。しかし、Ocean Diamonds社では専属のダイバーを雇い、小舟で海に出た少人数のダイバーグループでダイヤの原石を探索している。こうしてダイバーを登用することにより、地域雇用を生み出せるだけでなく、ダイヤ調達時のエネルギー量を従来よりも大幅に削減が可能。また、小規模な調達を行うことで「誰が、いつ、どこで、どんな状況でダイヤを発見したのか」を詳細に把握できるようになり、高いトレーサビリティを担保できることもポイントだ。

▷Azleeのオーシャンダイヤモンド・コレクション。金属部には、リサイクル金属を使用。

海底ダイヤモンドのコレクションを発表したAzleeでは2015年の創設以来、売り上げの1%を海洋保護プロジェクトに寄付してきた。ブランド創設者でデザイナーのベイリー・ズワート氏は、熱心なサーファーでもあり、日ごろから海洋環境に非常に高い関心を持っていたためだ。今回のOcean Diamonds社とのコラボレーションも、「トレーサビリティの高いダイヤモンドを扱いたい」という彼女の想いから実現したものである。

特別な想いを込めて選ぶジュエリー。長く付き合うものだからこそ、地球環境や遠い国の誰かを傷つけていないかにも目を配り、丁寧に選びたいものだ。

【参照サイト】Azlee
【参照サイト】Ocean Diamonds
【参照サイト】ダイヤモンド5つの真実│Diamond Producers Association

Edited by Yuka Kihara

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