国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、世界の設備容量に占める再生可能エネルギーの比率は、2020年時点で36.6%(※1)。再生可能エネルギーへの転換が急務となっているなか、私たちが日常的に使う場所で、環境をめぐる人々の意識を変えていくことは大切ではないだろうか。
私たちは1日に、150~250グラムほど排便しているという。便は普通トイレに流されてしまうが、韓国では「価値あるもの」として、便をエネルギーに変えるトイレが誕生した。しかも、このトイレを使うとデジタル通貨をもらえるので、何だか得をした気分になる。
この循環型のトイレ「BeeVi」を開発したのは、韓国の蔚山科学技術大学校(UNIST)で教授を務めるチョ・ジェウォン氏だ。BeeViは、同大学のリビングラボ「Science Cabin」に設置されており、学生はもちろんのこと、学外の人も利用することができる。学生たちがトイレの利用を通して環境意識を高めることにもつながる。
BeeViは、どのような仕組みでエネルギーを生み出しているのだろうか。このトイレではまず真空ポンプを使って、便を地下にあるタンクに引き込む。水で流さないことで、水の使用量も減らしている。そして便は嫌気性消化槽に移され、微生物の働きによって、メタンガスなどを含むバイオガスが作られる。バイオガスは精製され、同施設のガスレンジやボイラーの燃料として使うことができるようになるのだ。BeeViは、ぱっと見た感じは普通のトイレだが、その背後に様々な実験設備が備わっているのが面白い。
さらにBeeViがユニークなのは、「便を価値のあるものにしたい」という考えから、トイレの利用者に独自のデジタル通貨「Ggool」をプレゼントしている点だ。利用者は壁に貼られたQRコードを読み取ることで、1日に10Ggoolを受け取れる。このお金は大学内でコーヒー、果物、本などを買うときに使えるので、自分の排泄物の価値を見直すことができる。
また、Ggoolは、同施設の裏庭で育てた作物を買うときにも使える。実はこの庭では、BeeViでバイオガスを作るときに残った便を堆肥化し、栽培に活用している。資源循環の仕組みが、日常生活に馴染むかたちで取り入れられているのだ。
新しい技術や仕組みは、多くの人に興味を持ってもらうことによって広まっていく。もしあなたの近くにBeeViのようなトイレがあったら、「ぜひ使ってみたい」と思うのではないだろうか。
※1 Renewable Capacity Statistics 2021
【参照サイト】 사이언스월든 (sciencewalden.org)
Edited by Erika Tomiyama