難民女性の「生理の貧困」を解決する。ナプキン洗浄キット「Looop Can」

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紛争や迫害、人権侵害などによって故郷を追われる「難民」と呼ばれる人たちが増加している(※1)。最近でも、ミャンマーやアフガニスタンなどで情勢が悪化し、他国や他の地域に逃れようとしている人たちが後を絶たない。

故郷を追われた人たちの多くは、安全な場所を求めて命がけで移動する。しかしその道中はもちろん、避難した先でも、難民たちはさまざまな困難に直面する。そんな“困難”の一つが、難民女性の多くが抱える「生理の貧困」だ。実は、およそ60%の難民女性たちが、食料や乳幼児のオムツなどの生活用品を買うため、自らの生理用品の購入をあきらめている。

そんな難民女性たちの生理の問題を解決しようと立ち上がったのが、香港出身でロンドン在住のデザイナー・Cheuk Laam, Kara Wongさん。Karaさんが開発したのは、女性たちが簡単に生理用品を洗濯できるキット「Looop Can」だ。

Looop Can

image via Looop Can

このオレンジ色の缶の中には、竹素材のナプキン、重曹、洗剤が入っており、これらと500ミリリットルの水があれば、女性たちは簡単にナプキンを洗うことができる。およそ5年間、洗濯を繰り返しながら使い続けることができ、また洗浄後の水は生分解されるため、環境を汚染することなく、どのような場所にも流すことができる。

Looop from Kara Wong on Vimeo.

またLooop Canは、女性たちを性暴力から守る役割も持っている。これまで難民キャンプで生活する女性の多くは、ナプキンの交換などのため、夜中に外のトイレに行き、その途中に性暴力に遭うことがあった。しかしLooop Canを使うことで、シェルター内でナプキンの交換や洗浄ができるため、危険を冒してトイレに行く必要がなくなる。また、一見生理用品には見えないその形のおかげで、洗浄後は人目を気にすることなく、屋外で乾かすことができるのも特徴だ。

この生理用品洗浄キットは、レスボス島のカラテペ難民キャンプの若い女性たちのためにつくられたものだ。しかし、生理の貧困という課題は難民キャンプ以外でも見られる。経済的な事情から生理用品の継続的な購入が難しい人が世界中に存在するほか、災害時に被災者に生理用品が行き届きにくいという課題もある。また、宗教や文化的事情によって、タンポンや使い捨てナプキンの使用が難しく、選択肢が限られる人もいる。

難民女性の衛生環境や健康という基本的人権を守りたい──そんな想いから生まれた「Looop Can」。生理の貧困に悩むすべての女性たちにとって、心強い救いの手となるかもしれない。

※1 2020年末時点で、紛争や迫害により故郷を追われた人の数は8,240万人。過去最多の数字となっている。(UNHCR

【参照サイト】Looop Can
Edited by Tomoko Ito

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