ごみと貧困、二つの問題を同時解決へ。南アフリカの暗号通貨を使ったリサイクル作戦

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「ごみの分別は、正直ちょっと面倒」そう思いつつも、住んでいる地域の決まりや環境のために行っている人は、日本では多いのではないだろうか。

世界銀行によると、世界全体で年間20.1億トンの固形廃棄物が出ており、そのうち少なくとも33%が、環境に配慮した方法で処理されていないという。低所得国ではごみの総量が少なくリサイクル率も低い、高所得国ではごみが多くリサイクル率も高い傾向がある(※1)

中所得国の課題は、経済成長とともにリサイクル率も上げることだ。欧州と東洋の中継地として栄えた喜望峰のある南アフリカは、早い時期から近代化が進みアフリカ随一の経済水準となった。しかしリサイクル業者Regenizeによると、同国ではリサイクルシステムが有料だが、支払う余裕のない人が多いことからリサイクル率はかなり低く(およそ7.5%)、廃棄物の90%以上が埋立地に向かってしまう現状があるという。

また、貧困層への金銭的な支援制度が不足していることで、街中のごみ箱や埋立地からごみを拾ってきては売り、生活のためのわずかなお金を得る「ウェイスト・ピッカー」が出てきてしまうことも問題視されている。

そこでケープタウンに拠点を持つRegenizeは、人々が金銭の負担なく、むしろ少し報酬を得られるようなリサイクルシステムを構築した。住民がペットボトルやガラス製のものなどリサイクルできるものを洗ってから、専用の袋に入れて家の前に出すと、スマートフォンに暗号通貨Remali(リメール)が送られてくる。この通貨は、携帯の支払いやショップで使えるクーポンとなる。

そして、スマートフォンと作業着、移動用の自転車を提供されたウェイスト・ピッカーが、ごみを回収して公的なリサイクルセンターまで運ぶ。回収者は、スマートフォンのアプリ上で適切な報酬がもらうことができ、同時に、ごみの量や流れが可視化されるという仕組みだ。

 

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Regenizeは、南アフリカには解決すべき課題が多くあるためリサイクルの優先度は低いとウェブサイトで述べている。日々の生活で精一杯の人たちに対しては、環境保護を訴えるだけでは不十分なのだ。そういった人々の生活に直接的なプラスになる報酬を与えることで、取り組みの効果が上がりやすくなる。

遊び心とメリットのある仕組みで廃棄物が削減され、そして行政がカバーできていないごみ回収者の「金銭的支援」や「心理的安全」に取り組むRegenize。ごみに関する二つの課題を同時解決するユニークなアイデアだ。

※1 WHAT A WASTE 2.0. A Global Snapshot of Solid Waste Management to 2050
【参照サイト】REGENIZE
Edited by Kimika

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