ゲーム感覚で手話を学べるAIを使ったWebサービス。聴こえる人と聴こえない人をつなぐ

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生まれつき難聴がある「先天性難聴」。他の先天性疾患に比べて、発症する確率が高いと言われる疾患で、全新生児のおよそ1,000人に一人が、両側の耳が難聴状態で生まれている(※1)。難聴の子どもたちには、音声による言語能力の獲得に臨界期があり、難聴を放置してしまうと、言語発達の遅れなどを引き起こし、学習やコミュニケーションの問題につながるとされている。

しかし、生まれつき耳が聴こえない子どもたちの約90%が、耳が聴こえる両親のもとに生まれる(※2)。親たちの多くが、自らが手話でのコミュニケーションができないまま、子どもの言語習得について早急に考え、対応することが求められるのだ。

自らの子どもが難聴だという事実を受け入れる難しさや心理的負担があるなかで、子どもたちの発育のことを考えなけらばならない──そんな親たちの助けになるツールが開発された。AIテクノロジーによって、楽しみながら手話が学べるウェブサービス「Fingerspelling」だ。アメリカやデンマークに拠点を持つクリエイティブスタジオ「Hello Monday」が、NPO法人「American Society For Deaf Children」のサポートを得ながら手掛けた。

Fingerspellingのウェブサイトを開くと、まず右利きか左利きか尋ねられる。その後、画面に英単語と共に、その単語を表現するためには指をどのように配置すればよいかが3Dモデルで表示される。その形を真似して実際に指を動かすと、ウェブカメラが利用者の動きを感知し、精度を数字で表してくれる。レベルは1から4まであり、自分のレベルに合わせてアメリカの手話を学べるという仕組みだ。

このツールは、利用方法が非常に簡単であるため、子どもから高齢者までゲーム感覚で手話を学ぶことができる。難聴である本人はもちろん、その家族や周りの人たち、手話に少しだけ興味があるという人まで誰でも使いやすいのが特徴だ。

「耳が聴こえる人たちと聴こえない人たちの間にあるコミュニケーションの溝を埋めたい。」と、Hello MondayのAnders Jessen氏はIt’s Nice Thatのインタビューに対して話している。気軽にチャレンジしやすく手話習得のハードルを下げたFingerspellingは、Anders氏の言葉の通り、難聴という壁を超えて、人々をつなぐ架け橋になるかもしれない。

技術やデザインの力を使って、これまで見過ごされてきた社会の課題にアプローチすること──私たちが誰にとっても生きやすいインクルーシブな社会を築いていくために欠かせない観点なのではないだろうか。ウェブサイトを訪れるとすぐに試すことができるので、皆さんにも是非、Fingerspellingを体験してみてほしい。クリエイティブなアイデアが浮かんできそうな気がする。

※1 新生児聴覚スクリーニングの現状と今後の課題
※2 難聴乳幼児を育てる母親の育児ストレスに関する検討

【参照サイト】Fingerspelling
Edited by Tomoko Ito

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