“使い捨て”は卒業しよう。東南アジアで開発が進む、ココナッツ製のクーラーボックス

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漁業者が魚を運ぶために欠かせない、クーラーボックス。フィリピンの漁業者に一般的に使われている発泡スチロール製のクーラーボックスは耐久性が弱く、4回ほど使われると廃棄されてしまう。さらに、漁業者が廃棄したクーラーボックスがごみ捨て場に積み上げられ、最終的には海に流されることもあるという。発泡スチロールはプラスチックの一種であるため、海に流れ出ると分解されず、結果的にはマイクロプラスチックとなり、海洋汚染を悪化させる。(※1)

また、フィリピンで盛んなココナッツ産業では、ココナッツの中身を取り出した後の殻が焼却処分されている。ココナッツの殻は、炎天下で中身の実を守るための断熱性に非常に優れた素材で、再利用の可能性を秘めている。しかしごみとして廃棄されてしまうと、処分の過程でCO2が発生し、環境に負荷をかけるものとなってしまう。

一見遠いように感じるこれら2つの問題を、同時に解決する製品をつくる企業を紹介しよう。それが、発泡スチロールの代わりにココナッツの殻を加工した素材を断熱材に使用してクーラーボックスをつくる、「Fortuna Coolers」だ。同社のクーラーボックスは、断熱材にココナッツの殻の繊維を、防水加工された裏地にはリサイクルされた人口繊維を用いており、プラスチック製のクーラーボックスと比べると、断熱性にも耐久性にも優れている。

Fortuna Coolersを創業したタマラ・メッケラー氏と、デイビッド・カトラー氏は、どちらもスタンフォード大学出身だ。フィリピンの漁村に滞在した際に、地元の漁業者との親睦を深め、性能が良く手頃な価格のクーラーボックスの必要性を感じ、Fortuna Coolersを立ち上げた。

はじめは漁業者のためのクーラーボックスを、続いて2021年8月、アウトドアが趣味の人を対象としたクーラーボックス「Nutshell cooler」を発表し、Kickstarterでクラウドファンディングを行った。こちらは折りたたみ可能で収納しやすいデザインで、日本の折り紙から着想を得たという。

これらのクーラーボックスがあることで、ココナッツの殻は焼却処分を免れ、漁業用のクーラーボックスがすぐに壊れて廃棄されることもなくなる。さらに、製品に使われるココナッツの殻は農村地域の小規模なココナッツ農家から購入するため、彼らの収入は増加。子どもを学校に通わせられるようになったり、村の経済活動がより活発になったりしたという。また、漁業者はひとつのクーラーボックスを長く使えるため、消耗品にかかる費用をこれまでより安く抑えることができている。

クーラーボックス、そしてココナッツの殻の廃棄問題という2つの環境問題を解決し、ココナッツ農家や漁業者の貧困問題、地元の活性化などの社会的インパクトも生み出すFortuna Coolers。今後も、多くの課題を同時に解決する一石「多鳥」なアイデアが生まれることに期待だ。

※1 Fortuna Coolers

【参照サイト】Fortuna Coolers

Edited by Motomi Souma

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