産地=スーパーの屋上。ドイツではじまる究極の地産地消

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スーパーに並ぶ新鮮な野菜や果物。あなたは、それがどこから運ばれてきたのかを意識したことはあるだろうか。国内の地方で生産された食材もあれば、アメリカやメキシコなど、海外で生産されたものもあるだろう。

食の分野が抱える課題は多岐に渡るが、そのうちのひとつに、食材の調達の際に航空機やトラックなどから排出されるCO2の問題がある。食材の生産地から販売地までの距離が長いほど、当然CO2は多く排出されるため、その食に関連する環境負荷は高くなる。日本は食料自給率が非常に低く、海外からの輸入に食材の供給の大部分を頼っているため、食に関わる環境負荷が世界の先進諸国と比べると非常に高い。(※1)

最近では国内の食料輸送をトラックや自動車などから環境負荷の小さい鉄道や船舶へと転換するモーダルシフトに取り組む食品会社も出てきている。しかし、一番理想的とされるのは、生産地から販売地までの距離をなるべく近づける「地産地消」である。

そんな地産地消を突極の形で行うスーパーが登場した。ドイツの大手スーパーチェーンREWEが手がける、Wiesbaden Marketだ。ここでは、スーパーの建物の2階部分にある温室で、野菜と魚を同時に育ててその他の製品と一緒に販売している。これにより、輸送の際の環境負荷はほぼゼロになることに加え、お客さんも新鮮な野菜を買うことができるため、一石二鳥だ。

このスーパーで用いられているのは、アクアポニックスという農法だ。これは、水産養殖(「アクア」カルチュア)と、土を使わずに水で植物を育てる水耕栽培(ハイドロ「ポニックス」)を掛け合わせた農法で、魚の排泄物は植物の栄養になり、植物は水をろ過し魚の生育環境を整えるというものだ。双方にとってメリットがあるうえ、それぞれを単体で行うよりも水を節約することができ、環境にも良いとされている。REWEによると、このスーパーでは、約1万kgの鮮魚と80万鉢のバジルの生産能力がある。

建物の設計を手がけたのは、イギリスの建築事務所acme。天然の木材を用いたり、分解・再設計しやすいモジュール式を採用したりするなど、建築方法でも環境に配慮がされている。REWEは今後、この形態のスーパーをドイツ全国に展開する予定だ。

IDEAS FOR GOODはこれまでにも、屋上で野菜を育てるスーパーや、駐車場で野菜を育てるスーパーなどを紹介してきた。食料調達に関わる環境負荷は、なかなか見えにくいが、世界のこういったソリューションに目をとめ、私たちも生産地がなるべく近い食材を普段から選択するようにしていきたい。

※1 フードマイレージについて

【参照サイト】REWE
【参照サイト】acme

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