「男の子なんだから泣かないの」
「ほら、女の子なんだから。お行儀が悪いよ」
当たり前のようにそんな言葉を日々耳にして育ってきた。しかし、考えてみればここに“性別”という属性の言葉が付く必要はあるだろうか。
「泣かない泣かない」
「お行儀が悪いよ」
それだけでいいはずなのに、不思議である。大人になった今でも、身体に染み付いた属性がときに自分や誰かを縛っていると自覚することがある。この“染み付き”は、非常に根深い。
2021年10月、アメリカ合衆国のカリフォルニア州で、従業員500人以上の大規模小売店に対して「性別の明記のない玩具売り場の設置を義務付ける」法律が全米で初めて採択された。全商品ではなく、一部の玩具や育児用品が対象であるため、女の子用、男の子用それぞれのおもちゃ売り場は引き続き設置してもよいが、その他に「みんな用おもちゃ売り場」をつくりましょう、ということだ。
2024年より施行される本新法は、法案を提出したEvan Low議員のスタッフの娘さんが、あるおもちゃを探すのに男の子用の売り場に行かなければならないことに疑問を持ったことがきっかけになったのだという。
米大手小売業者であるTargetは2015年に男の子用・女の子用と分けた売り場を廃止しており、その他小売店においても、それに続くように性別を特定した売り場の廃止を行ってきた。新法案の採択は小売業界における更なる変化を推進するだろう。
本法案が議会を通過する際、反対派は民間企業が商品をどのように陳列するかを政府が指示すべきではないと主張したという。これに対し法案を提出したLow氏は、「私は、州として多様性と包括性の価値を示すことが重要だと考えています」とコメントしている。
筆者も一人の子を持つ親だが、子ども服売り場の前ではいつも頭を抱える。男の子用と書かれた売り場に置かれた服には、恐竜や車、宇宙などの柄が描かれ、色は青や緑を中心としたものが多い。必ずしもそれが悪いとは思わないが、選択肢が狭く、“男の子”というイメージにあまりにも縛られすぎていると感じる。
男の子らしく、女の子らしくではなく、自分らしく。若者らしく、老人らしくではなく、自分らしく。ステレオタイプで括った属性の中ではなく、一人ひとりがありのままで生きられるように世の中の流れが変わっていくことは、喜ばしいことだ。