サンゴ礁の状態は「音」でわかる?海の生態系に耳を傾けるイギリスの研究者たち

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多様な生き物のすみかであるとともに、漁業や観光の資源としても重要なサンゴ礁。そんなサンゴ礁が、海水温の上昇や、ダイナマイト漁などの漁法、海洋汚染、森林伐採などによる土砂の流出、天敵であるオニヒトデの異常発生といった様々な理由により、壊滅的な状況にさらされている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が2016年に発表した調査結果によると、2030年には世界のサンゴ礁の90%が、生存を脅かされる可能性があるという。 (※1)

そんな危機的な状況にあるサンゴ礁を修復しようと、多くのサンゴ礁再生プロジェクトが実施されているが、「再生されたサンゴ礁が、サンゴ礁の生態系全体を蘇らせていることを、どのように確認すればいいのか」という課題があった。サンゴの被覆面積を見るだけでは、サンゴ礁の健全性や生態系の状況を十分に確認できないという指摘もある。そんな中、世界的に注目されているのが、魚などの生物が発する「音」を用いた生態観測だ。

イギリスのブリストル大学やエクセター大学などの研究者が、2021年12月に発表した研究結果によると、インドネシアにあるサンゴ礁の周りで飛び交う音(サウンドスケープ)を観測することで、サンゴ礁の再生に成功したことを確認できたという。

研究者らは、劣化したサンゴ礁よりも再生されたサンゴ礁のほうで、より多くの魚の音を観測したという。再生されたサンゴ礁のサウンドスケープは、もとから健全なサンゴ礁のサウンドスケープと同じではないものの、音の種類の多様さが似ており、健全な生態系が存在することを示唆していた。

研究者らは、インドネシア中部のスラウェシ島で行われている「Mars Coral Reef Restoration Project(マースのサンゴ礁再生プロジェクト)」の一環で観測を行った。M&M’Sやスニッカーズといったお菓子で知られる米食品大手のマースが、同プロジェクトを支援している。劣化したサンゴ礁は3年で再生したとのことで、生態系も回復しつつあるのは嬉しいことだ。

サンゴ礁の再生に関する明るい希望が見えた研究結果だが、もちろん、最初からサンゴ礁が劣化しないように対策をとることが大切だ。気候変動や海洋汚染など、私たちが向き合わなければならない課題は数多くある。

※1 New global data on High Seas and Large Marine Ecosystems to support policy makers | United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization
【参照サイト】 December: Coral Reef restoration project | News and features | University of Bristol

Edited by Erika Tomiyama

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