砂糖から作る化学物質で、脱化石燃料へ。テキサスで生まれた「気候テック」

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気候変動や地球温暖化対策のため、世界では脱炭素の流れが加速している。普段、化石燃料と私たちの暮らしのつながりを意識することは少ないが、身近なところだと、洗剤やプラスチック、合成ゴム、化学肥料など暮らしに欠かせない品にも化石燃料を原料とするものが数多くある。

そんな化石燃料の代わりになろうと、今さまざまな企業が植物や酵母、藻などの素材を使った実験を進めている。今回ご紹介するのは、アメリカ・テキサス州のヒューストンにある気候テック企業「Solugen」の砂糖を使った新たな素材だ。

化学産業の脱炭素化を目指し、2016年に創業したSolugenは、「環境に害を与えない」というポリシーのもと、クリーンで持続可能な化学を社会にもたらすことを信条に掲げる。

そこで、化石燃料を原料としないバイオベース製品を作るために、原料にトウモロコシのコーンシロップを採用。生物学とテクノロジーを融合させ、毒素や排出物を出すことなく、洗剤やプラスチックなどの原料となる化学物質を生み出すことに成功した。

Solugenによると、化石燃料を原料とする場合は、原料に対し40%が副産物などになっていたが、Solugenの方法ならロスは10%で済む。室温でも製造できるとあって、膨大な電力もいらない。加えて、化石燃料と比べて低コストでの製造が可能だという。

もちろん機械を動かすための電力は必要だが、Solugenの工場は100%風力発電だ。同社によると、天然ガスを燃やして蒸気を作る火力発電よりも10倍効率的だという。さらに、製造の過程を密閉したクローズド・ドレイン・システムを用いることで、副産物を大気に放出せず、生産されたすべての材料は、再加工もできる。

コーンシロップの持続可能性は考えていく必要があるが、この技術を応用し、身近な素材を使ってカーボンネガティブな化学物質が生み出せれば、脱化石燃料の勢いはより一層強まるだろう。

SolugenのCEO、 ガウラブ・チャクラバルティ氏はFast Companyに対し、「同様のサプライチェーンが何年も続いている顧客が従来の方法から切り替えるには、非常に高度な証明と理由が必要です。そして、完全にシフトするには時間もかかります」と語っている。

企業にしても、個人にしても、今までの習慣やルール、環境を変えるのには、大きなパワーがいる。ただし、気候変動は私たちを待ってはくれない。今回の事例のように、世界経済を支える産業にカーボンニュートラルな選択肢を提示し続けることが、持続不可能な資源への依存からの脱却、そしてよりよい社会への大きな第一歩につながるはずだ。

【参照サイト】Solugen
【関連ページ】カーボンネガティブとは・意味
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Edited by Kimika

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