多くの人の心に影を落とす、家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンス:DV)。
内閣府によると、配偶者などのパートナーから「身体的な暴行」「精神的な嫌がらせや恐怖を感じる脅迫」「生活費を渡さないなどの経済的圧迫」「性的行為の強要」のいずれかについて「何度もあった」とする人の割合は女性9.7%、男性3.5%だという(※1)。
このような行為を「1度でも受けたことがある」人は、女性23.7%、男性16.6%と跳ね上がる。家庭内暴力は、多くの家庭や人々にとって、とても身近な問題なのだ。しかし、表面化するのはほんの一部。DV被害者には、とりわけ女性が多いことも特徴である。
そんな、身近なのに実態がよく知られていないDVについて啓発する「Museum of First Time」というオンライン・ミュージアムが登場した。
これは、タイのDV被害者支援団体WMP(Women and Men Progressive Movement Foundation)が、現地の広告代理店と共に作ったもの。「DVは一回では終わらない。もう暴力は振るわない、なんて約束は守られない。何かあれば、すぐに相談を」と呼びかけて、サイトに被害者が相談する用の連絡先を載せている。
ミュージアムに「入館」すると、DVを受けたAirという女性の目線で、部屋を歩くバーチャル・エクスペリエンスが始まる。薄暗い部屋で、生々しい雰囲気が伝わってくる。
「これは、初めて彼と一緒に撮った写真」「そしてこれは、初めて彼からもらったプレゼント」家の所々に置かれている、Airが夫との出来事を綴った手紙から、彼女が夫に出逢い、恋に落ちたことがわかる。最初は夫がAirに優しく接する姿が見られるが、それがいつのまにか暴力に変わり、次第にエスカレートしていくという、
愛情が激情へ、そして嫉妬心や極端な独占欲へと変貌し、また被害者側も悲痛な許容を繰り返してしまうという負のサイクルを生んだのだ。家庭内暴力には、身体的、精神的、経済的、性的なものなどが挙げられる。中には殺人未遂事件などに発展することもあり、決して軽んじてはならない「犯罪行為」だ。
家庭の問題に悩んではいるものの、被害者の中には、自分がされていることがDVだと気づいていない場合もある。一人で悩まず、自らの置かれている状況を客観的に理解するために、さまざまな情報にアクセスしたり、相談窓口に連絡したりすることが肝要だ。その点において「Museum of First Time」の存在意義は大きいといえる。
※1 第1節 配偶者等からの暴力の実態
【公式サイト】Welcome to Museum of First Time of Air.
【参考サイト】Once is enough for domestic violence victims
【参考サイト】内閣府 ドメスティック・バイオレンスについての概要を説明
Edited by Kimika