私たちは「ジェンダー」がもたらす偏見に強く支配されていないか?ロンドンの街角に突然現れた広告が、こう静かに語りかけてくる。
広告代理店CPBロンドンが仕掛けたこの新しいポスターキャンペーンは、今年の国際女性デーのテーマ「Break The Bias」にあわせて企画された。この広告のデザインは文字だけの至ってシンプルなもの。ビビッドなカラーは使われていない。文章は「Imagine」から始まり、様々な職業についている人が男性か女性か、と性別のイメージを問う疑問文が続く。
- 「社長」を想像してください。それは男性ではありませんか?
- 「看護師」を想像してください。それは女性ではありませんか?
- 「役員会議にいる人」を想像してください。それは男性ではありませんか?
- 「仕事をはやく切り上げて、保育園に子どもを迎えに行く人」を想像してください。それは女性ではありませんか?
プロジェクトのそもそもの始まりは、CPBロンドンが独自で行ったイギリスの全国規模の独自調査だった。この調査で、39%の小学生が「赤ちゃんの世話や家事は母親がすべきで、父親は仕事に行くべき」と考えていることがわかったのだ。
こうした古典的な女性と男性の役割についての思い込みが根深く残り、子どもたちの意見にまで現れていることを重く受け止めたCPBロンドンは、性別によって子どもたちがやりたいことを妨げない世界を作るために今回のプロジェクト実施に至った。
CPBロンドンによるクリエイティブは、こうした理念に賛同した公式サポーターとともに、SNS、街角のディスプレイ、映画館の広告などを通して、英国全土で3月から展開されている。
また、同社のサイトからは、子供向けの塗り絵も購入できる。その内容も家庭で男女の役割分担について話し合うきっかけとなるようなものだ。私達の中にある無意識の偏見を払拭するための対話の始まりをつくりたいというメッセージが、プロダクトにも現れている。
こうした生活に隠れるバイアスをあらわにしたこの調査だが、いくつか希望も見える。対象となった子どもたちの94%、つまり圧倒的多数が、子どもは好きなように育つべきだという意見に同意し、82%が男の子も女の子も努力すれば同じように優秀になれると信じていることも同時にわかったという。
未来の子どもたちが生きやすい環境をつくるためには──まずは私たちの世代で、無意識の偏見に向き合うことが大切なのかもしれない。
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Edited by Megumi