環境のために「縮小」するオランダ・スキポール空港。現地の反応とは

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オランダのスキポール空港は、世界の主要空港のひとつだ。2019年にはヨーロッパで3番目に旅客数が多い空港となり(※1)、2021年の利用客数は2,550万人だった(※2)

そんな主要空港が、環境への影響などを懸念し、「成長を止める」方向に向かうとしたら驚くだろうか。

オランダ政府は2022年6月、スキポール空港周辺の騒音問題、周辺住民の健康や自然環境に及ぼす影響を懸念し、同空港の年間発着回数を最大44万回に制限すると発表した。政府は、2023年11月には制限の適用を開始したい考えだ。

国際航空運送協会(IATA)によると、スキポール空港が処理できる発着回数は年間54万回。最大44万回の制限を設けると、空港の接続性が20%低下する可能性があるという(※3)。オランダ政府は、思い切った方向性を示したと言えるのではないだろうか。

同政府は、スキポール空港のような大規模な国際空港が、オランダの繁栄に大きく貢献していることを理解しつつ、人々のより良い生活環境を実現するために、経済・社会・環境のバランスを模索したという。

オランダ政府は、スキポール空港を所有するRoyal Schiphol Groupの筆頭株主であり、同社株を約69.8%保有している(※4)。そんな株主の意向に、スキポール空港はどのように反応しているのだろうか。

スキポール空港は、オランダ政府が示した方向性には不明な点が多く、航空ネットワークの質を維持するという観点からすると、大きなリスクがあるとしている。

同空港は、オランダと世界を繋げながら、環境負荷を減らすことをミッションに掲げている。今回示された方針については、考え抜かれた計画を立てるために、政府と話し合いを進めていくという。

政府の発表に対して、KLMオランダ航空IATAも、自らの考えを発信している。両者はスキポール空港より強い反対姿勢を示しており、「KLMとスキポールが築いたハブとしての機能が大きく損なわれる。環境やQOLの問題に関しても、望ましい効果をもたらさないだろう」「政府は、持続可能な航空燃料(SAF)の製造を支援するべき」といったことを述べている。

コロナ禍からの回復を目指す航空業界にとって、今回の発表はショックが大きかったのかもしれない。「持続可能な成長を目指す」という言葉をよく聞くが、それは具体的にどのような行動を意味するのか、考えさせられる。

※1 Schiphol | Schiphol International Portfolio Europe
※2 Schiphol | Annual Traffic Reviews
※3 IATA – Schiphol Flight Restrictions Throttling Air Connectivity Benefits in the Netherlands
※4 Schiphol | Shareholder Information

【参照サイト】Government limits flight movements at Amsterdam Schiphol Airport | News item | Government.nl
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