ハイテク自転車ライト「See.Sence」道路のデータ分析で英国流まちづくりに寄与へ

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排気ガスを出さず、健康的かつ経済的な交通手段として近年特に注目を集めているサイクリング。コロナ禍では自転車の売り上げが過去最高になるという「自転車ブーム」が世界中のさまざまな都市でみられた。そんな中、イギリスの北アイルランドにある小さな会社・See.Senseは自転車の「ライト」を使って人々の住む街をより安全にしようとしている。

See.Sence light

Image via See.Sence

See.Senseが展開する商品には、前方ライトと後方ライトと2種類があり、見かけはごく普通のライトと変わらない。しかし、その機能は計り知れないものだ。1.6キロメートル先まで照らすパワフルな照明が、サイクリストの視界を明るくするだけではなく、搭載されたAI過速度センサーがブレーキのかけ方や自転車の揺れを感知し、1秒間に800回も道路状況を解析する。

また、ライトの明るさや点滅は最も安全な走行が可能になるよう自動的に調整される。例えば曲がり角に差し掛かる際には、周りへの注意喚起として前方ライトの点滅速度が変化し、また後方ライトが赤く点滅することで車のブレーキライトのようにもなるという。

さらに無料のスマートフォンのアプリと連携することで、いつでも走行距離や、位置情報、盗難警報、電池残量を確認することができるほか、ユーザーの消費カロリーまで見ることができる。

一つ一つのライトのデータを集め、道路状況や自転車の通行頻度、走行の時間帯や走行者の男女比など様々な情報を街のデザインに活かす──これこそSee.Senseが、いくつかのイノベーション賞を受賞している理由だ。小さなライトひとつで、自転車丸ごとを情報収集センサーに変えてしまうという発想は、シンプルながら画期的である。

街の安全の仕組みをつくる彼らのライトは、世界中の都市で使われはじめている。現在3分の2の自転車利用者にとって「安全でない」という街ロンドンは、2030年までに人口の80%が安全にサイクリング出来る街づくりを約束している。ロンドン市の政策「Healthy Streets Approach」でも、See.Senseの集めた情報がサイクリングロードの設置や安全な交差点の分析などをするのに役に立っている。

世界各都市では、温暖効果ガス排出ゼロを目指すのと同時に、私たちの生活をより豊かにする街づくりをしようという動きが見られる。特にサステナブルなマイクロモビリティ(環境負荷の低い自動車よりも小さな規模の移動手段)に関しては、より細かい移動の観点が必要になるため、人々の暮らしに密着したデザインが求められるそうだ。

たったひとつのアイデアが、私たちの世界を少しずつ安全にしている。将来の私たちの街はどのように変化しているのだろう。

【参照サイト】See.Sence
【参照サイト】The great bicycle boom of 2020

Edited by Megumi

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