フィンランド人は、なぜ木を抱きしめるのか

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2022年8月20日、フィンランド北部のラップランドにある森で、今年で3回目となる「TreeHugging World Championships(ツリーハグ世界選手権)」が開催された。

今年の選手権の競技種目は、制限時間内にどれだけ多くの木をハグできるかを競う「スピードハグ」、特定の木にどれだけ想いを込めてハグできるかを競う「ひたむきハグ」、どれだけ創造性に富んだハグができるかを競う「フリースタイル」の3種類だ。

フィンランドにいない人も参加できるよう、木をハグした写真を投稿するオンライン選手権も開催され、盛況のうちに終了したこのイベント。なぜ、このような「変わった」取り組みが行われたのだろうか。

Image via HaliPuu

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同イベントを開催するHaliPuuという企業のCEOであるリーッタ・レカッリオ=ブンデリンク氏は、ラジオ・カナダ・インターナショナルの電話インタビューに対し、次のように語っている。

「これは、自然がいかに人生にウェルビーイングをもたらし、ストレスから解放するかを知ってもらうための楽しい方法です。新型コロナウイルスが流行した2020年、家に閉じこもりがちになった人たちを元気づけるために始めました」

国土の7割が森林で覆われたフィンランドにとって、森や木はとても身近な存在である。普段の仕事や街の喧騒から離れて、少しでも木を抱きしめることが、人々にとってのストレス解消になると考えたのである。「悩んだときは、森へ行く」という国民も多いほどだ。

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうなか、「木をハグしよう」と呼びかけたのは HaliPuuだけではない。アイスランドの森林局も2020年、人々が孤独感を克服できるよう、木を1日5分ハグすることを推奨した。

木に触れると心地良いことは、経験的に知られているが、その科学的な裏付けはあるのだろうか。日本の森林総合研究所の研究では、木材に触れたときに生じるストレスが、金属など他材料と比較して低いことを示す結果が得られたという。また、木の香りがストレスへの抵抗力を高める可能性があることも示唆された。

木をハグすると、自分が快適に感じると同時に「自然を大切にしたい」という気持ちが育まれそうだ。子供向けの自然体験活動などから疲れた大人まで、「木をハグする時間」を取り入れてみてもいいのではないだろうか。

【参照サイト】TreeHugging World Championships 2022 – Halipuu
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