循環が、自己表現になる未来。慶應鎌倉拠点が目指す循環型社会モデルとは?

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神奈川県南部に位置する人口約17万人の都市・鎌倉市。三方が山に囲まれ、一方が海に面するという豊かな自然と古都の情緒を強みに多くの人に愛されてきた鎌倉は、環境政策においても先進的な自治体として知られている。

鎌倉市のリサイクル率(令和3年度)は52.6%と全国平均の19.9%を大きく上回っており、人口10万人以上の市の中で4年連続全国1位に輝いている。「ゼロウェイストかまくら」を掲げる同市のごみ分別は21種類(2022年3月現在)で、市民や事業者の協力のもと、過去30年で燃やすごみを約6割削減することに成功した。

神奈川県鎌倉市

そんな鎌倉で、ごみの削減や再資源化を超えた新たな循環型社会モデルの実現を目指す取り組みが始まっている。それが、慶應義塾大学環境情報学部(SFC)教授の田中浩也氏が率いる産官学民連携プロジェクト「リスペクトでつながる『共生アップサイクル社会』共創拠点」だ。

同拠点は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)による「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」地域共創分野・本格型プロジェクトに採択されており、「循環者になるまち~社会でまわす、地球にかえす、未来へのこす~」というビジョンの実現に向け、3DプリンティングやAI、IoTセンサーなどのテクノロジーも活用しながらプラスチックなどの資源循環による地域の課題解決に取り組んでいる。

今回IDEAS FOR GOOD編集部では、全国に先駆けて先進的なサーキュラーエコノミーの実装が始まっている鎌倉市の現状と未来について、同プロジェクトを率いる田中氏にお話を伺った。

慶應義塾大学環境情報学部(SFC)教授・田中浩也氏

人が輝く循環型社会は「リスペクト」からはじまる

同プロジェクトの思想や理念を象徴しているのが、「リスペクトでつながる『共生アップサイクル社会』共創拠点」という拠点名だ。通常、サーキュラーエコノミーは3R(Reduce・Reuse・Recycle)や10R(Refuse・Rethink・Reduce・Reuse・Repair・Refurbish・Remanufacture・Repurpose・Recycle・Recovery)といった様々な「R」とともに説明されることが多いが、同拠点名の始まりの言葉は「Respect(リスペクト)」。この拠点名に込められた思いについて、田中氏はこう語る。

田中氏「循環型のまちづくりに取り組む地域が増えるなか、ただ循環型のまちを目指すというだけでは10年間にわたる活動の核にはできず、具体的にどのような循環型のまちづくりをするのかをもう一段深掘りする必要がありました。その中で生まれたのが『リスペクトでつながる共生アップサイクル社会』という言葉です。一言で言えば、人間中心でそこに参加する人々が輝く循環型社会を作りたいのです」

「『リスペクトでつながる』というのは、ごみ清掃員をされているお笑い芸人のマシンガンズ・滝沢秀一さんと対談した際に出てきた言葉です。3Rに続くRとして『Respect(リスペクト)』のお話があり、まちや市役所の方もみんなが共感し、スローガンに決まりました」

第2回ゴミフェス532におけるマシンガンズ滝沢さんと田中浩也氏のクロストークの様子(DMEC/慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターより引用)

「また、『共生アップサイクル』には、微生物やAIなど人間以外の存在とも共生し、ともにアップサイクルを実現していくという意味が込められています。背景も異なる多様な人が『リスペクト』でつながり、人間以外の種や技術とよりよい環境を作っていく。それが『リスペクトでつながる共生アップサイクル社会』なのです」

シンプルで分かりやすい言葉でありながら、この拠点名には、多様な人と人とがつながる上で大切となる人間としての姿勢、真に最適な循環の実現に欠かせないマルチスピーシーズの視点、テクノロジーの活用、そしてただ資源を回すだけではなく新たな「価値」を生み出す(アップサイクルする)と言うサーキュラーエコノミーのエッセンスが凝縮されている。

また、拠点の舞台となる鎌倉市自体も「それぞれの多様性を認め、お互いを思い、誰もが自分らしく、安心して暮らすことのできる『共生社会』」の実現を掲げており、2019年4月1日には「鎌倉市共生社会の実現を目指す条例」も制定している。行政の目指すまちづくりビジョンとも整合した拠点名となっている点もポイントだ。

鎌倉駅から徒歩5分程度の場所にあるプロジェクト拠点「リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ」。巨大な3Dプリンター設備がある。Photo by Masato Sezawa

「循環者」とは? 循環は自己表現になる。

鎌倉の取り組みの本質を理解する上で拠点名と合わせて欠かせないのが『「循環者」になるまち 〜社会でまわす、地球にかえす、未来へのこす〜』というビジョンだ。田中氏によると、拠点が実現したい未来を地域の中で共有するために、あえて小学生でも理解できるような平易な言葉で表現したという。

2023年4月には、循環型社会の新たな担い手となる「循環者」の育成に向けた新たな循環者教育特設サイト「循環者になろう」も公開している。

循環者教育特設サイト「循環者になろう」

サーキュラーエコノミーにおける議論では、生産者と消費者の距離を近づける、消費者から生産者へ移行する、市民意識を醸成するなど、私たち一人一人の役割を新たな経済社会システムの中でどのように変えていくのかについて語られることが多い。しかし、鎌倉の拠点が独自に掲げるのは、「生産者」でも「消費者」でも「市民」でもなく「循環者」という言葉だ。ありそうでなかったこの言葉には、どのような意味があるのだろうか。

田中氏「サーキュラーエコノミーという言葉はありますが、それを人のあり方に割り当てた言葉がなかったのだと思います。『循環』を『消費』に変わる新たな自己表現の手段にしたいなと。よく循環の話をすると『消費』は悪くて『生産』に戻るという話になりがちなのですが、実際にはそうでもありません。確かに消費には『廃棄』という悪い面もありますが、同時に多様な選択を通じて自己表現ができるという良い面もあります」

「消費がなくなると多様性もなくなってしまいます。そのため、消費のネガティブな部分は改善しつつ、『ごみにしない』という選択肢の多様性を増やすことで、『循環』を新たな自己表現の源泉にできれば良いなと思っています。消費の選択肢と同じぐらい循環の選択肢を増やすことで、循環が自己表現になる。それが循環者の意味です」

循環者という言葉には、「生産者」と「消費者」という二元的な視点からこぼれ落ちてしまう私たちの新しい自己表現のあり方や、目に見える物質の循環を超えた目に見えないものへのリスペクトが含まれているのだ。

社会でまわす、地球にかえす、未来へのこす

拠点ビジョンに含まれる「社会でまわす、地球にかえす、未来へのこす」という表現も、田中氏が考える最適な地域のサーキュラーデザインを誰もが理解しやすい平易な言葉に翻訳したものだ。下記のカタツムリ図は、この3つの循環を表現している。

3つの異なる循環を表現したカタツムリ図

カタツムリ図では、様々な資源の循環の選択肢を「地球にかえす(生物型循環)」「未来へのこす(ストック型循環)」「社会でまわす(フロー型循環)」の3つに分類している。

「生物型循環」とは、植木剪定材を堆肥化して鎌倉野菜を育て、さらに食べた野菜の残りをコンポスト化するなど、土を媒介とした生物資源の循環を意味している。対して「フロー型循環」は、プラスチックの水平リサイクルのように人工資源を繰り返し循環させていく方法だ。そして「ストック型循環」とは、例えば回収したプラスチックなどからベンチを作って公共空間に設置し、燃やしてCO2を排出するのではなく物体として炭素を固定していくといったイメージだ。

回収された資源を活用し、3Dプリンターで製作されたベンチ。Photo by Masato Sezawa

田中氏によると、この図はもともと世界的なサーキュラーエコノミー推進機関として知られる英国エレン・マッカーサー財団が提示する「バタフライ・ダイアグラム」からインスピレーションを受けて作成したものだという。

バタフライ・ダイアグラム(Circular Economy Hub より引用

田中氏「バタフライ・ダイアグラムはとてもスタンダードなモデルなのですが、以前から二つ思っていたことがありました。一つ目が、循環の『速度』が表現できていないという点です。生物資源の循環(分解や再生)の速度は(人工物と比較して)とても遅いのですが、この自然の速度と人工物の速度のずれが、バタフライ・ダイアグラムでは表現しきれていないのです。そのため、カタツムリ図では、生物型循環(最も内側のオレンジの円)とフロー型循環(最も外側の緑の円)で、上のほうが早くて下がゆっくりという速度感覚を表現しました」

「また、もう一つがストック型の循環です。バタフライ・ダイアグラムではなるべく内側の円のほうが良いとは書いてあるのですが、ストックするという概念は明示されていません。これらのエッセンスを表現したくて、生物・ストック・フローの3つに整理しました」

森林などの生物資源は「再生可能資源」と言われるが、実際には再生速度を上回る速度で消費をすれば、その量は減少し、最終的には枯渇してしまう。木が燃やされ、CO2が排出されていく速度と、木がCO2を吸収しながら成長していく速度の違いを想像すれば、生物資源の循環において「速度」という概念がいかに重要であるかはすぐに分かるだろう。

また、この循環の速度を究極的に伸ばすという視点に立つと、資源を高速に回すのではなく後から取り出せるように「ストック」しておくという新たな選択肢があることにも気付く。

さらに、かたつむり図では「地球にかえす」は地域との連携(市内)、「未来へのこす」は行政との連携(県内)、「社会でまわす」は企業との連携(県外)という形で、循環のスケールとそれに関わるステークホルダーも明記されているのが特徴だ。そして、田中氏はこのように多様な循環が同時に存在していることが重要だと語る。

田中氏「原則として、いろいろな循環が同時多発的にある状態が好ましいと思っています。たった一つの究極の循環系などはありません。どの循環にも、時間がかかる、経済的に成り立たない、などの弱点があります。何か一つを追いかけるというよりも、まずはいくつもの循環を作ってみて、それをボトムアップで繋げていくシステミックデザインのイメージですね」

田中氏 Photo by Masato Sezawa

子どもたちにも親しみやすいかたつむり図の裏側には、田中氏の考える理想的なサーキュラーデザインの思想が組み込まれているのだ。

これらの拠点名やビジョン策定には、一年半におよぶワークショップや議論を通じて総勢150人ほどが関わったという。考え抜かれた言葉とダイアグラムは、ビジョン共創プロセスの質の高さを物語っている。

循環の選択肢を増やす「しげんポスト」

地域における循環の多様性を高める上で大事な重要な役割を担うのが、現在鎌倉市役所、プロジェクト拠点となる「リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ」、そしてプロジェクト参画企業である「面白法人カヤック」オフィスの3箇所に設置されている「しげんポスト」だ。

しげんポスト

しげんポストでは、シャンプーや食器用洗剤など生活清潔用品のつめかえパックを回収しており、回収されたプラスチックは、再びパッケージにリサイクルされたり、3Dプリンターを活用して制作されるベンチや遊具の素材として活用される。

田中氏「鎌倉市では、たとえばプラスチックでも、ペットボトル、容器包装プラスチック、製品プラスチックがそれぞれ分けて回収されています。そうした自治体回収の上に、さらに特定の製品やジャンルだけにもう一段階絞って集めることで、高品質な循環を生み出すことができる。その入り口となるのが『しげんポスト』です。現在は3ヶ所ですが、今後町内会などでも増やしていく予定です」

「自治体の資源回収は曜日と時間が決まっているのですが、鎌倉のようにいろいろなライフスタイルが入り混じる中都市では、生活リズムが回収のタイミングと合わない人もいます。しげんポストは好きな時間に出しにこれる常設回収スポットとしての役割があり、例えば働いている男性が日曜日に子どもと一緒に出しに来ることもできます」

しげんポストの根底にも、循環に参加できる選択肢が増えれば、それが消費に変わる新たな自己表現の手段になるという考え方が貫かれている。

マテリアル・クラウドファンディング

また、しげんポストには地域の最適なサーキュラーデザインを実現するための、もう一つの役割がある。

田中氏「しげんポストには重量センサーが入っており、何曜日の何時に投函されたかのデータを見ています。どの地域のどの場所にどの時間帯であれば最も人々が回収に参加しやすいのかを実験しながら見つけていく、という意味もあります」

これらのしげんポストから収集されるデータなども活用しながら現在開発が進んでいるのが、資源循環ルートの見える化を目指す地域資源循環デジタルプラットフォーム「LEAPS(Local Empowerment and Acceleration Platform for Sustainability)」だ。最終的にはいつどこでどのような資源がどの程度回収されたかをリアルタイムで見える化することで、全く新しい市民参加型のまちづくりの実現を目指している。

田中氏「例えば、公園のベンチが欲しいと思ったとき、みんなで洗剤パウチを300枚集める必要があると分かったり、『あと20%で達成です』みたいなことができたら面白いですよね。みんなで資源を収穫して、みんなでまちをつくるという感じです」

オランダでは、地域の人々が生ごみを持ち寄り、「Worm Hotel」と呼ばれる公共コンポストに投入し、堆肥化できたら収穫祭として出来上がった堆肥を持ち帰ってまた家庭菜園などに活用するという仕組みがあるが、LEAPSでは、まさにそのプラスチック版のような未来が構想されている。

また、しげんポストと合わせて重要な役割を果たすのが、面白法人カヤックが提供する「まちのコイン」だ。まちのコインはカヤックが開発するコミュニティ通貨で、しげんポストに資源を投函すると、まちのコインを入手できるようになっている。田中氏は、このまちのコインを活用することで、さらなる体験が提供できるという。

面白法人カヤックが提供するまちのコイン

しげんポストに投函すると、まちのコインがもらえる。

田中氏「まちのコインのアプリを通じて、集めた資源でこういうアイテムができたと連絡するようにしているのですが、そうすることで、回収に参加してくれた人の体験がマテリアルのクラウドファンディングのような体験になるのです」

「また、今後まちのコインをごみの収集業者の方に送ることができるようにできないかなぁと妄想しています。自分以外の循環に携わっている人々へ、リスペクトを送りあうツールとしてコインを使うことができれば、結果として互いのウェルビーイングが高めあえるのではないかと思っていて、地域通貨を活用した「リスペクト経済」の可能性を研究するグループも活動を開始しています」

市民がお金ではなく素材を寄付することで、まちに必要なベンチや遊具が増えていく。また、その協力を通じて手に入れたコインを使って感謝を示し、リスペクトが循環することで地域のウェルビーイングが高まっていく。物質以上の何かが循環する未来がそこにはある。

まちに実装されていく遊具とベンチ(提供:リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ)

アップサイクルの先にある「リープサイクル」とは?

田中氏が理想とする循環の実現に向けてもう一つ欠かせないのが、同氏が提唱するアップサイクルを超えた「リープサイクル(跳躍循環)」という概念だ。リープサイクルとは、一言で言えば、一度アップサイクルしたらそれ以降の循環ができないやり方ではなく、一回目、二回目、三回目とサイクルが繰り返されるたびに高付加価値となっていくような循環のあり方を指す。

田中氏「オリンピックのプロジェクト(田中氏が手がけた再生プラスチックを活用した東京2020大会表彰台制作プロジェクト)で分かったことは、リサイクルで作ったものを捨てるわけにはいかないというか、受け取った人もリサイクルされたものは捨てにくく、普通にゴミを捨てるよりもリサイクルされたものを捨てるほうが罪悪感が大きいことでした」

「そのため、私たちはアップサイクルの際のルールを二つ決めています。一つはモノマテリアル(単一素材)で作る。材料を混ぜず、接着剤なども使わないということ、そしてもう一つはマテリアルの成分表示をつけるという点です。QRコードを読み込むと、『捨てずに循環させるには?』というガイドが読めるようになっており、いらなくなったらこのラボに持ってきてくださいといった指示が書いてあります。このラボで作ったものは基本的にラボに戻ってくることになっていて、成分データを読み込んでペレットに戻せば再び循環させることができるようになっています。アップサイクルの次まで見込んだアップサイクルという意味で『リープサイクル』と呼んでいます。」

製作されたプロダクトには、QRコードで読み込み可能なプロダクト・パスポートが実装されている。 Photo by Masato Sezawa

サーキュラーエコノミーの概念の普及に伴い、市場では製品使用後の再循環までを想定せずに混合素材で作られるアップサイクル製品なども増えてきているが、リープサイクルはその壁を突破する新たなコンセプトなのだ。まだテスト段階ではあるものの、アップサイクルを真に優れた循環の選択肢にする上で非常に重要な考え方だと言える。

鎌倉で「循環」をデザインする意味

鎌倉市が先進的に環境政策やリサイクルを進めている背景には、もちろん自治体特有の事情もある。鎌倉市では2025年3月末を持って市内唯一の焼却施設の運営を停止予定となっており、徹底した資源化による燃やすごみの削減は必至命題でもあるのだ。

また、鎌倉は地域の自然や景観を開発から守るためのナショナル・トラスト運動の日本における発祥の地(1964年)でもあり、豊かな自然を大切にしようとする市民意識の高さも環境政策を後押ししてきた。

より時代を遡れば、鎌倉時代から続く古都の街並みを大切に守り抜いてきた「伝統」を大切にする精神も、未来へのこす「ストック型循環」といった考え方との親和性も高いだろう。

豊かな自然に囲まれた古都・鎌倉

田中氏は、こうした鎌倉ならではの歴史や市民力の高さといった地域特性との整合性が、循環型社会への移行に向けたプロジェクトを推進する上では重要だと語る。

田中氏「循環型のまちづくりの取り組みにはそれぞれ地域性があると思うのですが、鎌倉が『循環者』という市民の力に着目するという成り立ちにしたのは、このまちの最も大切な資源は『人』と『まちへの強い愛着』だと思ったからです」

「また、鎌倉の取り組みに一体感があるとすれば、その理由は目的が地域の課題解決だからだと思います。まずは鎌倉のごみ焼却問題を何とかしようという明確な目的があるからこそ、企業や大学も共創しやすいという側面がありますね」

どのような資源をどのように循環させることが最適なのか、その答えは当然ながら地域によって変わってくる。循環型のまちづくりを進める上では、未来に向けたビジョンと現在のまちの課題、そして過去のまちの歴史とのベクトルが真っ直ぐと地続きになっていることが重要なのだ。鎌倉はそのベクトルの角度がピッタリと揃っているからこそ、プロジェクトに推進力が生まれているのだろう。

2032年までのビジョン実現に向けて着実と歩みを進めている鎌倉だが、これからどのような未来を描いているのだろうか。最後に田中氏に聞いてみた。

田中氏「最終的には鎌倉で実証したモデルを、他の人口20万人規模の『中都市』に横展開していきたいと思っています。環境省の掲げる地域循環共生圏では、『都市』と『農山漁村』を一旦わけて、それぞれの良さを連結させるモデルが示されていますが、私はそのどちらでもなく、都市と農山漁村の要素が混然一体に混ざり合った『中都市』から、新しい循環型まちづくりのモデルがつくれると考えています。あと個人的な最終的な夢として、『循環姉妹都市』のような事例までいけたらいいなとも思っています」

リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ前にて。 Photo by Masato Sezawa

編集後記

取材を通じて強く感じたのは、田中氏が紡ぐ言葉や表現の一つ一つに、そこに辿り着くまでの思考と実践の積み重ねを反映した深みがあるという点だ。

「リスペクトでつながる『共生アップサイクル社会』」という拠点名や「循環者」という造語、分かりやすさとエッセンスを共存させた「カタツムリ」循環図、循環の選択肢を増やすことで循環を消費に変わる「自己表現」の手段にするという思想にいたるまで、鎌倉の取り組みには循環の本質を追求し続ける中で育まれた哲学が一貫して貫かれている。だからこそ、市内外の企業から多分野にわたる研究者まで多様なステークホルダーが参画しながらも、全体としてまとまった生態系が形成されているのだろう。

田中氏が提示する「循環者」というあり方は、鎌倉に限らずとも私たち一人一人がそれぞれの地域で実践できるものだ。鎌倉の事例に学びつつ、ぜひあなたもまずは自分の暮らす地域から「循環者」として変革に向けた一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

【参照サイト】リスペクトでつながる『共生アップサイクル社会』共創拠点
【参照サイト】循環者教育特設サイト「循環者になろう」
【参照サイト】しげんポスト
【参照サイト】まちのコイン
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