もうゴミじゃない。使用済の紙おむつを、建築資材にリサイクルする研究

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使用済の赤ちゃん用紙おむつを、低コストで住宅を建てるのに役立つ建築資材にしていく。そんな「捨てない」未来が、もうすぐ来るかもしれない。

2023年5月、科学の学術雑誌Scientific Reportsに掲載された論文によると、使用済の紙おむつが、住宅用建材のコンクリートやモルタルの砂の代わりになるという。紙おむつには、木材パルプや、綿、レーヨン、ポリエステル、ポリエチレンなど強度のある素材が使われている。

使用済のおむつを集め、赤ちゃんのうんちを取り除き、セメントや砂などと組み合わせて、洗浄・乾燥・細断などの工程を踏むだけで、ただのごみから建材に変身するというのだ。

実際に紙おむつ建材の活用が想定されているのは、住宅アクセスが課題となっている中・低所得の国や地域だ。住宅の不足や、価格の高騰によって、人として十分な生活レベルを持てない人は多くいる。

今回の研究では、インドネシアの建築水準下で住宅の試作が行われた。その結果、平屋建て住宅の場合、砂の代替率が最大8%までは、建材の強度に有意な低下が見られないことがわかった。

コンクリートの画像

建材を作ることが可能だと証明されたあとにも、もちろん課題は残る。そのうちの一つは、普段なら家庭で捨てられているおむつを、どのように回収していくかだ。赤ちゃんの排泄物がついたおむつを、わざわざ自宅から他の場所に運ぶとなった場合、モチベーションを想起させる設計などが必要となる。

今回の研究を行ったシスワンディ・ズワイダ氏らも、論文で「大量のおむつの消毒や洗浄には、廃棄物処理の関係者の関与が不可欠。素材を細断する機械も要るし、法改正も。現在の建築規制では、既存の建築資材を使うことを前提にしているため、新たな素材を使えるようにするために、政府の役割も大きい」と今後の課題を述べている。

しかし、発見は第一歩となる。毎年数百万トンほど廃棄される紙おむつのごみが、住む場所に困っている人々を助けることができることがわかっただけで、少しポジティブな気分になれる。

【参照サイト】Application of non-degradable waste as building material for low-cost housing

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