家畜や雑草と食卓を囲んだら?ヒトを再考する「ポスト人新世」アート

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もしも地球上に存在する多種多様な動植物たちと、一つのテーブルを囲んで未来について語り合う機会があったなら、彼らは私たち人間になにを語るだろうか。

2021年、ヴェネチアビエンナーレの一環として展示されたインスタレーション「Refuge for Resurgence(復活のための避難所)」は、まさに人間、動物、植物、さらには菌類に至るまで、地球上のあらゆる生命体が一つのディナーテーブルを囲むというものだった。

Refuge for Resurgence

Superflux_Refuge for Resurgence (c)Giorgio Lazarro

野生のオークの木から作られた4メートルのテーブルの周りには、ディナーに参加する動植物に合わせた14種類のスツールとテーブルセッティングが並ぶ。参加者は、キツネ、ネズミ、スズメバチ、ハト、牛、イノシシ、ヘビ、ビーバー、オオカミ、カラス、キノコ、そして3人の人間だ。

ロンドンのSuperfluxによって制作されたこのインスタレーションは、人類が地球を支配した後の時代である「ポスト人新世(アントロポセン)」の世界を表現しており、現在、人間の支配下では「雑草」「害虫」「害獣」とみなされている種や、家畜として扱われている種も、ここでは正当な地位を取り戻し、皆平等な立場で席についている。

物理的にインスタレーションに加わっているのは、スズメバチ、キノコ、カラスの剥製だけだが、鑑賞者は展示されている細かな手がかりからゲストの正体を推測し、それぞれの席に座る参加者を探索することができる。手がかりとなるのは、カトラリーや、配膳されている料理に加え、イラストレーターのニコラ・フェラオ氏が陶器の皿に描いた一つひとつの種の破壊から復活に至るまでの神話的な物語だ。

Refuge for Resurgence

Superflux_Refuge for Resurgence (c)Mark Cocksedge

Refuge for Resurgence

Superflux_Refuge for Resurgence (c)Mark Cocksedge

その物語はどれも「こんな未来であってほしい」と願う参加者の声を代弁しているようにも感じる。

現代社会のなかで、私たち人間は気候変動の危機を認知しながら、それでもなお自然や野生動物に依存し、彼らの住処を破壊して生きていくことを止められない。この矛盾に対し、Superfluxの共同創設者アナブ・ジェイン氏は、まず視点や考え方を変える必要があると訴える。

「このジレンマから抜け出すための私たちの提案は、私たち自身と自然との関係の見方を完全に変えることです。人間を自然から切り離したものとして見るのではなく、人間は自然の一部であることを理解する必要があります。自然のシステムや地球の生態系に対する私たちの姿勢を根本的に変えることで、私たちがこれまで及ぼしてきたダメージを覆すことができるのです」
引用:creatures

Refuge for Resurgence

Superflux_Refuge for Resurgence (c)Mark Cocksedge

「人間以外の生命体と食空間をともにする」という擬似体験は、地球上の全ての種に対して共同体意識を持ち、生物多様性に富んだ豊かな地球が確実に繁栄し続けるために、私たち人間が果たしていかなければならない役割を考えるきっかけとなるだろう。

この地球に生きる全ての生命体が自分の一部であるならば、今起こっている環境破壊は自分の一部が破壊されているということだ。このまま自分自身を破壊し続けるのか、はたまた復活のために行動を起こすのか、私たちは今、大きな分かれ道に立たされているのかもしれない。

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【参照サイト】Refuge for Resurgence

アイキャッチ画像:Superflux_Refuge for Resurgence _Credit – Giorgio Lazarro

Edited by Erika Tomiyama

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