ガストやジョナサン、バーミヤン、しゃぶ葉などのレストランで知られる株式会社すかいらーくホールディングスが、2023年8月に東京・東村山にオープンした「ガスト 東村山市役所前店」。ここは、再エネを活用することで年間88トンものCO2を削減できる「環境配慮モデル店舗」である。
国内15社と協働することで実現した、CO2排出実質ゼロ・脱炭素を目指せるファミリーレストラン。その裏には、さまざまな工夫が施されている。
まずは、電力。「エネルギーフリー社会」の実現を目指す株式会社Looopの協力のもと、店舗の屋根に54.72kWhの太陽光発電設備を設置。ここで発電される電気はすべて同店舗の運営に充てられており、現状では全電気量の30%を賄っているという。太陽光発電で賄いきれない残りの70%の電力については、株式会社CDエナジーダイレクトの協力により調達。同社の再エネ指定のトラッキング付き非化石証書(※)を使用することで、実質的にCO2排出量がゼロを実現している。
※ 発電時に化石燃料を使用せず大気中のCO2を増やさない「非化石電源」からつくられた電気が持つ環境価値を、証書化して取引できるようにしたもの
次に、ガスは東京ガス株式会社が扱う「カーボンニュートラル都市ガス」を採用。天然ガスを採掘し燃焼するまでに発生する温室効果ガスを、新興国での環境保全活動で創出されたCO2クレジットでカーボン・オフセットすることで、地球規模ではCOが発生しないとされる仕組みだ。
電力とガス以外にも、CO2の排出量を抑える仕掛けはある。たとえば、人感センサーを効率よく取り付けたり、ハイサイドライトで自然光を取り入れたりして照明の消費電力を抑えたり、シーリングファンで店内の空気を循環させることで空調の省エネをはかったりなどだ。
環境省によると、2020年度に化石燃料から作られたエネルギーを起源としたCO2排出量は、9億6,700万トンであった。そのうち、飲食サービス業と宿泊業からは2,400万トンが排出されている。これは、「産業その他部門」で卸売業・小売業に次いで2番目にCO2排出量が多い結果だ。
CO2排出量や電力供給の方法は目に見えないため、削減への取り組みを多くの人に届けることは簡単ではないだろう。しかし、すかいらーくホールディングスのグループ総店舗数は、国内外に2,973店。そのうちガストは1,281店を占めている。全国に店舗があり、多くの人にとって身近なファミリーレストランの一つであるガストが本気で脱酸素に取り組むことは、大きな一歩だと言える。
今回の環境配慮モデル店舗のオープンにより、飲食業界でもさらに良い風が吹くことを願う。
【参照サイト】すかいらーくホールディングス 【環境配慮モデル店舗】CO2排出量実質ゼロのガストが初オープン
【参照サイト】すかいらーくホールディングス ブランド店舗数
【参照サイト】環境省 その他のデータ集
Edited by Kimika