カーボンクレジットとは・意味
カーボンクレジットとは?
カーボンクレジット(carbon credit)とは、CO2の排出量見通し(ベースライン)に対し、実際の排出量が下回った場合、 その差分をクレジットとして認証したものである。クレジットは一般的に、モニタリング・レポート・検証を経て、温室効果ガス排出削減量「t-CO2」単位で認証され、排出量取引市場で取引される。世界規模でのネット・ゼロの取組み促進の影響もあり、カーボンクレジット市場は急速に拡大しており、その動向が注目されている。
CO2の排出量見通し(ベースライン)は、排出量削減に向けた対策を実施しない場合における汚染物質の排出見込み量に応じて、設定されることになる。排出量削減のプロジェクトを実施することによって、実際の排出量がベースラインを下回った場合、その差分がカーボンクレジットとなる。
炭素排出量取引の方法
まずは、炭素の排出量を取引する仕組みについてみてみよう。排出量取引のスキームには「ベースライン・アンド・クレジット」と「キャップ・アンド・トレード」の2つの方式があり、カーボンクレジットは、前者の「ベースライン・アンド・クレジット」のスキームで扱われるものである。
両者の違いをわかりやすく説明すると、「ベースライン・アンド・クレジット」方式では排出量見通し(ベースライン)が設定され、「キャップ・アンド・トレード」方式では、排出許容量の上限(キャップ)、つまり排出枠が与えられるという点が異なる。
例えばある企業が、排出量削減につながるようなプロジェクトを実施する場合、「ベースライン・アンド・クレジット」方式では、ベースラインと実際の排出量の差分をカーボンクレジットとして発行し、市場で取引することができ、「キャップ・アンド・トレード」方式では自社にとっての余剰排出枠を、排出枠を上回った他社に売却することができる。「キャップ・アンド・トレード」では、排出枠、つまり一定の排出ができる権利が与えられることから、「排出権取引」とも呼ばれる。
カーボンプライシングとの関係
炭素排出量を取引するためには、炭素の排出量に価格付けを行う必要があり、そこで用いられるのがカーボンプライシングである。排出量取引の際には、炭素価格(1t-CO2あたりの単価)が設定されることになる。
炭素価格は、カーボンクレジットの発行者や対象事業の内容によって異なるが、一般的に、排出量削減以外の付加価値(例えば社会へのポジティブなインパクト)が高いほど、価格も高い傾向となる。
カーボンクレジット市場の概況
カーボンクレジット市場は成長を続けており、2021年には前年比で市場規模が48%拡大した。クレジット発行数は、2020年の3.27億件から2021年の4.78 億件へと増えている。
クレジット市場には「国際的なクレジットメカニズム」、「政府・自治体によるクレジットメカニズム」、「民間事業者によるボランタリーなクレジットメカニズム」の3種類があるが、このうち、ボランタリーなメカニズムによるクレジット取引の成長率が最も高く、2021年のクレジット取引量は2020年比で92%増加し、10億米ドルを超えている。
これまでに発行された総クレジットで一番多いのが、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)によるクレジットであるが、CDMのクレジットの発行は2012年がピークであり、2021年に発行されたクレジットの約74%を占めているのが、ボランタリークレジットである。
以下の図からも、2018年以降、ボランタリークレジットが、カーボンクレジットのメインストリームになってきていることが伺える。
出典:世界銀行「State and Trends of Carbon Pricing 2022」より
以下は、それぞれのカーボンクレジットのメカニズム概要だ。
国際的なクレジットメカニズム
国際的なクレジット取引の代表例がクリーン開発メカニズム(CDM)である。同メカニズムは京都議定書の元で運用されてきたが、2021年に英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、CDMの後継となる仕組みが議論された。
CDMの後継の仕組みは、パリ協定第6条4項(持続可能な開発に資するクレジットメカニズム)に沿ったものであることから、「64メカニズム」と呼ばれる。2022年にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27でも、運用細則をはじめとする実施指針や作業計画が決定された。CDMで登録されたプロジェクトは、今後「64メカニズム」に移管されていくことになり、この新たな国際的メカニズムの動向が注目される。
政府・自治体によるクレジットメカニズム
世界の国や自治体でクレジットメカニズムの導入が進んでおり、日本でも2013年より「J-クレジット制度」、「二国間クレジット(JCM)」が運用されている。「J-クレジット制度」に関しては、東京証券取引所が2022年9月22日より「カーボン・クレジット市場」にて、実証事業というかたちで「J-クレジット」の試行取引を開始している(実証参加者は法人や地方自治体であり、個人は対象外)。
また、「東京都キャップ&トレード制度」等、自治体独自のクレジット制度も広がっている。
海外では、豪州炭素クレジット(ACCUs)、California Compliance Offset Program、Australia Emissions Reduction Fund等が運用されている。
ボランタリーなクレジットメカニズム
民間事業者によるボランタリーなクレジットメカニズムは、上述のとおり、近年取引が増加しており、ビジネスでの活用にも注目されている。代表的なボランタリークレジットの仕組みとして以下の2つが挙げられる。
Verified Carbon Standard(VCS)
WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)やIETA(国際排出量取引協会)などの団体が、2005年に設立した認証基準。森林や土地利用に関連するプロジェクト(REDD+を含む)や湿地保全による排出削減プロジェクトなど多様なプロジェクトが実施されている。2018年の年間取引量の66%を占める。
Gold Standard
WWFなどの国際的な環境NGOが2003年に設立した認証機関。自らVER(Verified Emission Reduction、温室効果ガスの削減・吸収量について発行されるクレジット)を発行するだけではなく、CDMプロジェクトの中でも、現地のコミュニティへの貢献などの付随的なベネフィットを有するとみなされたプロジェクトについては、GSが認証する取り組みを実施している。2018年の年間取引量の20%を占めている。
ボランタリークレジット市場に関連して、2020年9月には、マークカーニー氏(元イングランド銀行総裁、国連気候アクション・ファイナンス特使)らが民間セクターにおけるクレジット市場拡大を目的としたタスクフォース「Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets(TSVCM)」を設立している。TSVCMは、ネットゼロ実現のためには現在のクレジット市場を2030年までに15倍以上にする必要性があると提言しており、ボランタリークレジット市場は今後更なる発展が見込まれている。
カーボンクレジットの課題
カーボンクレジットには、批判や数々の指摘も挙がっている。例えば、国際的な環境団体Greenpeaceは、ネットゼロを達成するツールとして森林系クレジットが注目されている状況に対して、カーボンオフセットは本質的な解決策ではない・森林で固定されたCO2は永久的に固定されているものではないことを主張。
また米の環境団体のRAINEFOREST ACTION NETWORKは、銀行に対して、融資先がクレジットによってネットゼロを達成する際に、特に現地住人の人権を侵害しているクレジットを使用しないことを要求。
英の広告業界の規制を管轄する組織Advertising Code Committeeは、Shell社が実施するカーボンニュートラル主張について、炭素クレジットでShell社が排出するCO2が補償されていることを正確に証明・説明することができておらず、誤解を招く訴求内容であることについて、環境広告コード(MRC)違反と判断している。
こういった状況を見ると、本質的な排出削減策の必要性、クレジットの品質や透明性の担保等、クレジット創出側・活用側の双方で留意すべき課題が多いことが分かる。
カーボンクレジットをネットゼロ実現に向けた有効なスキームとしていくためには、質・量ともに高いレベルを目指していく必要があるだろう。
【参照サイト】みずほリサーチ&テクノロジーズ「カーボン・クレジットを巡る動向」カーボンニュートラルの実現に向けた カーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会(第1回)資料
【参照サイト】みずほリサーチ&テクノロジーズ「カーボンプライシング:各国で進む炭素排出の見える化 日本では炭素税の導入で攻防続く」
【参照サイト】JETRO「世界で導入が進むカーボンプライシング(後編)炭素税、排出量取引制度の現状」
【参照サイト】世界銀行「State and Trends of Carbon Pricing 2022」
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- CSA(地域支援型農業)
- CSR(社会的責任)
- CSV(共通価値の創造)
- Cycle Logistics(サイクルロジスティクス)
D
E
- eスポーツ
- EBPM(証拠に基づく政策立案)
- Eco-DRR
- EdTech(エドテック)
- e-ヘルス(e-Health)
- ELSI
- Environmental Gentrification
- ESD
- ESG投資
- ETS(排出権取引スキーム)
- EUタクソノミー
- EU-ETS
F
- FaaS(Farming as a service)
- Fab Lab(ファブラボ)
- Farm to Fork
- FemTech(フェムテック)
- FinTech(フィンテック)
- First Movers Coalition(FMC)
- Flight shame
- FOMO(Fear of missing out)
- FSC認証
- FtM(Female to Male)
- FTSE4Good Index(フッツィー・フォー・グッド・インデックス)
G
- GHG排出ピークアウト
- GNR革命
- GovTech(ガブテック)
- Green Climate Fund(緑の気候基金)
- Green Dating
- GRI(Global Reporting Initiative)
H
I
- IaaS(Infrastructure as a Service)
- IIRC(国際統合報告評議会)
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- Internet of Animals(動物のインターネット)
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- IPCC
- ISSB
- IUU漁業
J
L
- LAC(Living Anywhere Commons)
- LCA(ライフサイクルアセスメント)
- LEAPアプローチ
- LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)
- Learning by doing
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- Life-Centered Design
- LOHAS(ロハス)
M
- MaaS(Mobility as a Service)
- MAPA(Most Affected People and Areas)
- MENA(ミーナ)
- Medtech(メドテック)
- MDGs(ミレニアム開発目標)
- MSC認証
- MtF(Male to Female)
N
O
P
Q
R
S
- SaaS(Software as a Service)
- 里山イニシアチブ
- SASB
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- SBTs for Nature(Science-Based Targets for Nature)
- SDGsウェディングケーキ
- SDGsウォッシュ
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- Shecession
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- SPO(Sustainable Public Equity Offering)
- STEAM教育