報道されなくなったら終わり、じゃない。「忘れられた」問題への支援を考える動画

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世界各地で続く紛争や自然災害の数々。悲惨な映像を目にして心を痛める人は多いだろう。

しかし、その痛みはどれくらい続いただろうか。1年前に社会が注目していた危機的な出来事に、今日この瞬間に同じくらいの熱量で人々の目が向けられることはそう多くないのではないだろうか。

こうして社会の関心が次々と移り変わっていく背景として挙げられるのが、マスメディアによる報道のあり方だ。紛争や自然災害の被害が大きいほど、その出来事は大々的にニュースで取り上げられる。ところが、その事態が鎮静化または特に変化が起こらなくなると、マスメディアはそれを取り上げることをやめてしまう。こうして人々がその話題に触れる機会が減少し、関心が遠のいてしまうのだ。

人々の関心が薄れると現地への支援も減っていくことは、容易に想像がつく。そこにはまだ助けを必要とする人々がいるにもかかわらず、報道陣が去ってしまうと同時に、国際社会からの支援も届きにくくなる。これでは、長期化した被害への対応や事後のケア、復興に向けて十分な支援を確保することは難しいだろう。

こうした現状について映像を通して伝えようと、国際NGOであるHandicap Internationalが「After the news」というキャンペーンを立ち上げた。動画ではまず初めに、世界各地での紛争や自然災害の現場をレポートするメディア関係者の姿が映し出される。

事態が落ち着くと、レポーターたちはその場を去っていく。逃げまどっていた人々も、まるで何もなかったかのように包帯やマスクを外し、安堵した様子を見せている。

ここで「We’d all like things to be like this. But just because the news moves on, it doesn’t mean that a crisis is over.(私たちは皆、物事がこうであってほしいと願っています。 しかし、ニュースが次へ進んだからといって、危機が終わったわけではないのです)」というナレーションが流れる。つまり実際には、状況が落ち着いてメディアが去ったとき、すぐさま人々も回復するなんてことは起きないのだ。

最後に投影されたのは、片足をなくした女の子と、義足の装着を手伝う一人の女性だ。Handicap Internationalがメディアの注目を浴びなくなった国や地域においても、長く支援の体制を整えていることを伝えている。

同団体は障害を持つ人々への支援を中心としているため、最後の映像が義足に関するものであったが、長期的に支援を必要とする人はもちろん障害を持つ人々だけではない。高齢者は被害後の生活に困難が伴うかもしれない。妊婦は出産の相談ができるクリニックが必要だろう。子どもたちには心のケアが必要かもしれない。町がインフラを整えるにも支援が必要なはずだ。

報道を追うことは、世界で何が起こっているのかを知るためにとても大切な習慣だ。しかし、テレビ画面上に流れてくる映像は、現実に起きているすべての事象を平等に映しているわけではない。その画面の向こうにいる「人」はその場所で生き続け、ニュースに取り上げられなくなった今も、緊急時とは異なる支援を必要としているのだ。

一方で、情報を発信する立場である我々メディアは、事態が鎮静化した後もその場所で支援を必要とする人がいることに目を向け、伝え続けることの大切さに向き合う必要がある。いま届けようとしている情報は、誰の声を映しているのか──この問いと向き合い続けることで、メディアの役割を考える必要があるだろう。

【参照サイト】HI unveils its new institutional campaign|Handicap International
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