プラスチックできっちりとラッピングされた商品や、厳しく統一された規格──私たちの身の回りには、こんな「完璧な」商品で溢れている。そして規格外の商品は不良品として扱われ、排除される。
こうした商品管理は、顧客の満足を得られる商品を届けるためには、当然といえば当然かもしれない。しかし、これにより廃棄物は増え、エネルギーの無駄も生み出すなど、決して持続可能ではないのも確かだ。
そんななか、フランスのシャンパーニュブランド「TELMONT(テルモン)」は、今年から「完璧な」ワインボトルの提供をやめると決意した。
リサイクルガラスを使ってワインボトルを製造する場合、ガラスを元の色からその商品の色に合わせる必要がある。その場合、商品の色ではない、中間色もガラス製造の際には現れるが、これまで、そうした規格外の色のボトルは選別・廃棄されてきた。こうしたプロセスは、多くの資源、エネルギーを無駄にしてしまう。
そこで、シャンパーニュ・テルモンは、標準の色(グリーン)にするために出てきた色のガラスは全て受け入れることにした。その結果、年間19万3,000色のワインボトルが「グリーンからシナモンまで」唯一無二の色合いで販売されることになった。ワインボトルはもはや、「みんなちがって、みんないい」ことになったのだ。これらの「グリーンっぽい」ボトルは、85%がリサイクルガラスで製造されており、100%リサイクル可能だ。
1912年創業のテルモンは、オーガニック農法やCO2排出量の削減、そして徹底したテロワールを守りながら、職人による伝統的な製法で少量生産を基本としたシャンパーニュ造りを行っている。同社は2023年にも、市場最軽量のシャンパーニュボトルを開発したことでも話題になった。重さは800グラムで、標準的なシャンパーニュボトルよりも35グラム軽い。これにより、輸送によるCO2排出量を減らす狙いだ。
シャンパーニュは、高級感も大事な要素。選び抜かれ、統一された色のボトルは、メゾンの心意気や風格を感じさせる。そんな中での、今回の思い切った決断。これをあなたはどう感じるだろうか。やはり、「完璧にそろっていない商品なんておかしい」と思うだろうか。それとも、「多様なパッケージもあっていい」と感じるだろうか。
最近は、「完璧でない商品を販売・購入する習慣」としてwonkyというキーワードも徐々に広がりをみせており、多様な商品のあり方を認める動きが現れている。
多様な商品のあり方を個性として受け入れられるのは、もしかすると、私たちの成熟の証かもしれない。完璧ではないモノも受け入れられる社会は、私たちの気分を少し楽にしてくれる。「不完全でもいい」は、モノだけでなく、私たちにも向けられたメッセージではないだろうか。
【参照サイト】シャンパーニュ・テルモン公式ホームページ
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【参照サイト】A new standard for Champagne bottles? Champagne Telmont adopts lightest ever bottle
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Edited by Erika Tomiyama