子どもたちは、遊びを通して成長する。しかし、自閉症などの障害のある子どもたちは、おもちゃを買いに行く際に苦労することがあるそうだ。例えば、自閉症のあるリアムは不規則な大きな音が生じる場所では、音に圧倒され不機嫌になってしまうと彼のお母さんがおもちゃブランドでおなじみのLEGOによる動画の中で語っている。このような聴覚過敏や視覚過敏をはじめ、感覚過敏のある人は、公共スペースでも心地よく過ごせるように刺激を調整する必要性(Sensory Needs/センソリー・ニーズ)があることも多い。
このようなニーズの認知度は低いかもしれないが、LEGOはこのセンソリー・ニーズに着目した新たな取り組みを始める。2024年4月より、米国とカナダのすべてのレゴ・ストアで、無料で貸し出し可能な“感覚バッグ”が常備され、感覚過敏の人も過ごしやすい場所を目指すというのだ。
感覚バッグには、環境騒音を低減するノイズ低減ヘッドフォンや、コミュニケーションをとるのが苦手な人でも、指差しで感情を伝えることができるビジュアルキューカード、照明を穏やかに見せるためのストロボ低減メガネなどのアイテムが入っている。また、VIPストラップを首からかけることで、感覚調整が必要なことが従業員からもわかるように工夫されている。
このツールキットを提供するのが、連携団体であるKultureCityだ。同団体は、聴覚過敏や視覚過敏などの感覚過敏をはじめとした目に見えない障害を持つ人たちが公共空間においてより快適に過ごせるインクルーシブな空間をつくるために活動している。感覚過敏の人でも快適に過ごすことができる場所にはKultureCity® Sensory Inclusive™認証を付与している。
レゴ・ストアは、4月の世界自閉症啓発月間を記念し、“脳の多様性”を祝い、応援する取り組みとして同団体との連携を発表。2024年4月より米国とカナダのすべてのレゴ・ストアがこのKultureCity® Sensory Inclusive™認証を取得予定だ。デンマークにあるレゴ・ハウスはすでに認証を獲得しており、今年後半にはさらに多くの国の店舗へ広げていくという。
この取り組みに対し、自閉症のある子どもたちやその親などにはとてもポジティブが反応が見られ、11歳のイザベラはプレスリリース内で次のようにコメントしている。
「人混みや騒がしい場所にいると、緊張してしまいます。(ノイズ低減)ヘッドフォンは、大きな音を打ち消してくれるので、本当に助かります。ストレスが少し軽減されるんです。近くに人がいて、緊張しているときは、フィジェットを取り出して遊んで気持ちを落ち着かせます。より歓迎されているように感じられるので、レゴ・ストアに(ノイズ低減)ヘッドフォンとフィジェットがあるのが嬉しいです」
この取り組みのほかにも、同社が発行するマガジンの内容をわかりやすくするために、ニューロダイバーシティに重点を置いたコンサルティングなどを行うイギリスの団体Special Networksと連携し、誰にでもわかりやすい言葉選びや、レイアウト変更など、多様性の推進に力をいれている。
またレゴ財団の「Play for All」アクセラレータープログラムは、多様な脳を持つ子どもたちやその家族のためのおもちゃ、製品、サービスの開発を中心とする5つの団体に合計1,100万ドル以上の助成金を交付した。その他、LEGOの公式YouTubeでは、自閉症のクリエイターを取材した動画シリーズ“Love the Way You Think”も公開している。日本在住の自閉症アーティストGaku氏の動画もあり、注目だ。
世界的に知られているブランドだからこそ、今後も先進的な取り組みを行うことでおもちゃ業界や小売業界をけん引していくことに期待したい。
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【参照サイト】KultureCity