「あなたの古着から、欲しい服つくります」シンガポール遺産局の“仕立て屋に持ち込もう”キャンペーン

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気軽におしゃれを楽しめるのは素晴らしいことだ。しかし、ファッションには「流行」や「飽き」があり、私たちは着られる服でも捨ててしまうことがある。毎年1,000億着生産される衣料品のうち、9,200万トンが埋立地に行き着く。つまり、毎秒ゴミ収集車1台分の衣類が埋立地に捨てられていることになる(※)

各地の埋立地に大量の衣服の墓場を作る一因となっているのが、低価格で大量生産して利益を上げるファストファッションだ。人権侵害にも及ぶような低賃金での労働環境や、製造・廃棄プロセスにおいて大気汚染などを引き起こすことも指摘されている。

こうした国際的なファッション業界の課題は、ローカルな文化を重視することで解決に近づくかもしれない。シンガポールのNational Heritage Board(国家遺産局)は、地元の仕立て屋コミュニティを活性化させようと「Recustom(リカスタム)」というキャンペーンを立ち上げた。

Recustomは、「服を長く着る」習慣を促進し、消費者と生産者のパートナーシップを築きながら服を作ることを目指している。顧客はRecustomのウェブサイトでデザインを選び、型紙をダウンロードし、そのデザインで指定されている種類の不要な服を地元の仕立て屋に持って行く。同キャンペーンへの参加を表明しているデザイナーと提携した地元の仕立て屋は、顧客の不要な服を再利用してさまざまなスタイルの服やアクセサリーに生まれ変わらせる。

 

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ファッションの無駄を減らしながら、顧客は特別な一着を手に入れることができるのだ。このRecustomの取り組みは、仕立て屋やドレスメーカーにパターンを持ち込むことが一般的だった昔のファッション業界にどこか似ているかもしれない。

仕立て屋の作業は、既成服とは異なり時間がかかる。しかしその分、顧客は手持ちの服の価値に気付き、仕上がった服にも愛着が湧くようになって、その服を「より長く」着るようにもなるだろう。

また、仕立て屋と顧客の間に生まれたコミュニケーションから「次もここで頼もう」という信頼が生まれると、ファストファッションのような労働や環境の問題を生み出すことなく、シンガポール国内で資源を小さく回すことができる。この「地域ぐるみ」の循環はファッションの分野で新しい可能性と喜びをもたらすのではないだろうか。

10 Concerning Fast Fashion Waste Statistics
【参照サイト】Recustom
【参照サイト】Not sold off-the-rack, Singapore brand’s clothing can only be fashioned by local tailors
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Edited by Megumi

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