フランス、コスメ試供品の無料配布を禁止。消費者の行動を変えうるか?

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フランスでは、化粧品などの試供品を無料で受け取ることが過去のものとなりつつある。消費者が望まないかぎり、会計の際に無料サンプルを受け取ることができなくなったのだ。

影響を受けるのは主に、クリームやその他の美容製品、または香水や化粧品の小さな袋や容器だ。スーパーマーケットの試食コーナーで提供されるような「事前に包装されていない食品で、その場で消費者に無料で提供されるもの」など、特定のサンプルは影​​響を受けない。違反した場合は罰金が科される可能性がある。

サンプル

これはもともと2022年7月、環境法で規定されていたものだ。しかし適用法令がなかったため、この措置は実施されていなかった。2024年4月23日に発表された法令で、サンプルの定義が明確になり、法律の適用が進むことになったのだ。

「無料だから」とつい余分なサンプルをもらい過ぎてしまい、結局使わずに捨ててしまった経験がある人は少なくないだろう。一方、無料サンプルのお試しが新しい製品を購入するきっかけとなる人もいたかもしれない。この規制に対しては化粧品業界から懸念の声が上がっている。サンプル配布は新製品の宣伝や顧客獲得に重要な役割を果たしてきたため、特に中小企業の販促活動に影響が出る可能性が考えられる。

また、消費者側の反応も分かれている。FacebookやLinkedInなどでは、以下のような疑問の声も上がっている。

「環境のためには少しの不便は我慢すべきです。むしろ、本当に必要なものだけをサンプルとして受け取れるので良いことだと思います」
「新しい製品を試す機会が減るのは残念です。消費者の選択の自由を制限しすぎではないでしょうか」

ただし、この規制においては、消費者がサンプルを要求した場合、その提供が可能であるため、法的拘束力が強いものであるとは言えない。店舗や企業は電子メールやストアのアプリ経由の通知、またはテキストメッセージなどを用いて消費者に変更について知らせ、無料サンプルの請求方法を案内することが可能だ。これは、オンラインで製品を購入する場合にも適用される。顧客が購入時に無料サンプルを受け取りたいと回答した場合、そのリクエストを取り下げるまで、それ以降のすべての購入時に無料サンプルを受け取り続けることができる。

それでも、こうした選択の機会を積極的に与えることは、人々が日常的に消費のあり方を根本から見直すための重要な一歩と言えるだろう。近しい例として、フランスでは、2023年4月1日から循環経済法に基づき、レシートの自動印刷が禁止されている。そのため、どの店でも会計後にレシートが必要かどうかを確認されるようになった。これは、自動的にもらえるものを思考停止して全て受け取るのではなく、「本当にレシートが必要か」を考えさせる機会を与えている。

こうした日々の小さな選択の積み重ねが、私たちの消費に対する意識を徐々に変えていくきっかけとなるのではないだろうか。

【参照サイト】La fin des échantillons gratuits dans les parfumeries et les centres commerciaux ? Ce qui change réellement
【参照サイト】Why shoppers will not automatically get free samples now in France
【参照サイト】Décret n° 2024-373 du 23 avril 2024 relatif aux conditions et modalités d’application du V de l’article L. 541-15-10 du code de l’environnement

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