夏本番の8月。環境負荷を認識しながらも、エアコンをつけなければいけない日々にモヤモヤしている人も多いのではないだろうか。気象庁によると、2024年6月の世界平均気温は過去30年の偏差より0.59℃暑い。これは、統計開始の1891年以降最も高く、昨年の2023年を上回る結果だった。
特に、アスファルトやビルの多い都市ではヒートアイランド現象が問題となっている。
ロサンゼルスのパコイマでもヒートアイランド現象が深刻だ。サンフェルナンド・バレー北東の山々に囲まれているパコイマは、サンタモニカの涼しい海風が届きにくい場所にある。ロサンゼルス郡で最も暑い地域であるにもかかわらず、周辺地域のような開発支援もほとんど受けていなかった。
そんななか、パコイマの道路や学校、プレイグラウンドなどを、地域の人やアーティストたちがペイントするプロジェクトが行われた。
カラフルな塗料は「streetbond」と呼ばれる、北米最大の屋根・防水材メーカーのGAFの製品で、太陽光を反射させる機能を持つ。同社は約1.5キロに渡ってコーティングした道路を2022年から1年間観測し、その効果をレポートで発表した。その結果は以下の通りだ。
- 晴れた日の路面温度は、平均10℃低下
- 周辺気温は平均して晴天時で約2.1℃、猛暑時で約3.5℃、夜間時で約0.5℃減少
- 都市部のヒートアイランド現象は、暑さがピークの時間帯で25〜50%、夜間も含めた24時間で13〜21%低下
このように、この塗料を塗ると、道路の表面温度だけでなく、周辺の気温も下げられることがわかっている。光化学やオゾン大気質への悪影響や、道路に色が塗られることによるドライバーへの悪影響もないそうだ。
また、新たに色が塗られることで、それまで使われていなかった場所に人が集うようになったり、地域に活気が生まれたりといった変化も起こった。地域住民からは、さらなるコーティングの要望もあるという。
この「GAF Cool Community Project」は、企業と地域の団体、地元のアーティストなどの共創で実現された。特に地域で活動する団体「Pacoima Beautiful」は、プロジェクトを行うにあたりパンフレット配布や電話がけ、道路封鎖の影響を受ける住民を訪問するなど、まちでの丁寧なコミュニケーションを心がけたという。
同団体は、幼い子どもたちの通学中に目にしたごみや悪臭をきっかけに地元の母親5人によって設立され、25年間にわたり地域の環境や文化への貢献を果たしてきた。
パコイマでは、過去にも灰色の塗装を用いてヒートアイランド現象の緩和に取り組んだ実績がある。今回はよりアーティスティックに、地域のコミュティが主体となって、さまざまなセクターを巻き込んで成功を収めた。
インドネシアでも、「白い屋根」がエアコンの代わりになるなど、特殊な塗料を使った酷暑対策が広まっている。深刻で解決に時間がかかる問題にこそ、クリエイティブの力を用いて、市民を巻き込みながら取り組むことが大切なのではないか。そんなことを教えてくれる事例だ。
【参照サイト】GAF Cool Community Project
【参照サイト】Help keep your city’s streets cool and colorful
【参照サイト】 GAF Cool Community Project:PACOIMA, CA
【参照サイト】COOL SURFACES IN PACOIMA
【参照サイト】How One Los Angeles Neighborhood Is Guarding Against Deadly Heat
【参照サイト】世界の月平均気温