若者だけの問題にしない。気候変動に立ち向かう、シニア・コミュニティがアメリカで発足

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近年、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんをはじめとした、若い環境活動家たちが注目を集めている。これからの未来を生きる若者世代が、これからの未来を生きる若者世代が、安心して暮らせる地球を持続させていくために、環境破壊や気候変動問題に関心を持つ人々が増えているようだ。

では、さらに上の世代はどうだろうか。彼らは「これまで環境問題を放置してきた大人たち」として、若者の痛烈な批判の対象とされることが多い。しかし、彼らは環境問題に対してまったくの無関心というわけではない。内閣府がおこなった調査(※)によると、60代は49.5%、70歳以上は61.1%もの人たちが「地球環境問題に関心がある」と答えている。これは同じ回答をした30歳未満の約3倍にものぼる数だ。

日本に限らず、世界には環境活動に意欲的なシニア層が多い。2021年、アメリカで気候変動や人種的正義の問題に取り組む団体「Third Act(サード・アクト)」が創設された。環境問題や人権問題について活動する団体は数あれど、サード・アクトの特徴は「メンバーが全員60歳以上」という点だ。創設者であるビル・マッキベン氏は60歳以上の人々による組織を立ち上げた理由についてこう語っている。

「60歳以上の人々(私たち)は、どれほどの変化が訪れたかを誰よりも深く感じているかもしれません。(中略)もしあなたが今70歳なら、これまでに人類が排出した炭素の約80%が排出された時期を地球上で過ごしたことになります。したがって、私たちは自分たちがこの問題に関与していること、そしてそれに対して多くのことができることを知っており、それらが人々を実際にアクションへと駆り立てるのです」

サード・アクトは、気候変動危機に影響を及ぼすとされる会社に融資をしている大手銀行への抗議活動や、政治へのアクセスが制限されることに対する危機感から民主主義を守る活動などをおこなっている。また、これまでの人生で培った知識、経験、スキルやネットワークを活かして、環境や社会正義のために活動する若者を支援。世代を超えて寄り添う姿勢は、気候不安や課題解決のプレッシャーを抱える若者たちの心理的サポートにもつながっている。

Third Act活動の様子

Image via Third Act

カナダでもシニア世代による活動が活発だ。2023年4月にトロントの金融街にシニア世代の人々が集まり、石油・ガス産業へ多額の投資を行ったカナダの大手銀行RBCに対する抗議デモが実施された。プラカードに書かれた「孫のために」というメッセージには、次世代により良い地球を引き継いでいきたいという彼らの想いが込められている。

彼らはこれまでの人生の中で気候変動の影響を実際に肌で体験しているからこそ、危機感は強い。また、女性や性的マイノリティの権利を保障するための運動など、大きな社会の変化を目の当たりしてきたからこそ、声を上げることの重要性を感じているのだろう。

すべての大人が現在の地球で起きている問題をないがしろにしているわけではない。そして大人たちの善行が、若者たちを勇気づけていることを忘れてはならない。

内閣府令和2年度気候変動に関する世論調査
【参照サイト】Third Act HP
【参照サイト】YALE Climate Connections
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