世界で最も暑い夏と呼ばれた昨年に続き、今年も記録的な暑さが続いている。“災害級”ともよばれる猛暑で、夏休みの外出を延期したり、スポーツやバーベキューなど屋外でのアクティビティを躊躇したりと、暑さをしのぎながら暮らしている人も多いだろう。猛暑の日々が続く中で、少しずつこれまでの夏の過ごし方が変化してきているのを感じているのではないだろうか。
そんな中、2024年8月にWWFジャパン(世界自然保護基金)による「夏の風物“止”展」が渋谷ヒカリエにて開催された。このままでは、猛暑、ゲリラ雷雨、そして気候変動によって日本の夏の定番だった風物詩が見られなくなってしまうことを伝える展示だ。日常の中でのちょっとした異変・違和感を言語化しながら、この暑さにストップをかける必要があることを表現している。
今回は訪れた展示の中から筆者がハッとしたことものをいくつか紹介する。
まずは、野外でのスポーツ大会だ。夏の風物詩といえば、オリンピック、パラリンピック、夏の甲子園など夏を盛り上げるスポーツの話題は多い。パリ五輪でも暑さ対策が講じられたが、今後は選手や観客の体調を考慮して、夏の開催が難しくなるかもしれない。
気温上昇の影響はこれだけにとどまらない。夏のアツいイベントも開催ができなくなり、外出の機会も減ってしまう可能性がある。夏の勢いにのったひと夏の恋、ギラギラの太陽に勇気をもらう夏の定番ソング、炎天下にも負けない盛り上がりを見せる夏フェス、子どもから大人まで盛り上がりを見せるスイカ割り。これらも、昔の夏の思い出になってしまうかもしれない。
また、多発するゲリラ雷雨も、夏の外出を難しくしている。天候が急変しやすいと、夏山登山や川遊びは、より危険を伴うだろう。2024年も足立区で開催予定だった花火大会が直前に中止になったのが記憶に新しいが、今後もこのような不測の事態が増えてくるかもしれないのだ。
このように身近な出来事から気候変動について考えるきっかけがあると、難しい話題でも周りの人とも話し合ったり、考えたりと、アクションにつなげやすくなるのではないだろうか。こうしてみると、暮らしの中で暑さの影響によって変化してしまっているシーンはいくつもあり、対策が必要なのだ。
展示の最後には、再生可能エネルギーについての解説や、政府に声を届けるためのコメントスペースがあり、学びを行動にもつなげる導線も用意されていた。
WWFの気候エネルギーグループ 吉川景喬氏は今回の企画の背景についてこのようにコメントしている。
今回の展示は2025年3月、第7次エネルギー基本計画策定が予定されているのを前に「再生可能エネルギー」を求める声を集めるためのイベントとして開催しました。温暖化の影響で姿を変えてしまうかもしれない夏の風物詩を集め、それを入り口にエネルギー問題を考察。それとともに再エネをさらに増やしていく必要性を知っていただき、政策決定者へのメッセージを寄せていただくという内容です。身近な風物詩から、温暖化を自分ゴトとして捉えていただくことで、エネルギー問題について関心を持ち、再エネが必要だと考えているけれども声を出す場がないと感じている方々に、声をあげてほしいという思いで企画しました。
WWFのインパクトのあるキャンペーンは度々話題になる。行動変容科学の手法に基づき、難しい話題も自分のことに引き寄せ、楽しく考えられるようなコミュニケーションを心掛けているという。クスッと笑い、思わずシェアしたくなる、そんな展示から気候変動という大きな問題に思いを馳せてみるのもいいかもしれない。
【参照サイト】WWFジャパン
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