英国初の協同組合鉄道「Go-op」誕生。ルートも料金も、みんなで決める民主的運営へ

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首都圏への一極集中によって、地方の過疎化が進む。地方では車社会が定着し、慣れ親しんだローカル鉄道が廃線の危機にさらされるようになった。

1960年代に鉄道の廃線が相次ぎ、それらの鉄道がつなぐ地域の孤立化が問題となったヨーロッパ。ところが今日、鉄道復活の流れが起こっているのをご存じだろうか。

イギリスでは、史上初めて協同組合が運営する画期的な鉄道会社が誕生する予定だ。鉄道規制庁(Office of Rail Regulation)は、既存の路線に新たな選択肢を提供する「オープンアクセスオペレーター」として、英国協同組合メンバーの「Go-op」による鉄道サービスを承認した。2025年12月までに、ウエスト・カントリー地域で1日6便以上の列車運行が開始される予定だ。

Go-op

Image via Go-op

このニュースのポイントは、協同組合による鉄道会社という点である。協同組合とは、組合員が出資、所有管理し、組合員のニーズを満たす形態で事業を行う非営利法人。日本では、生活協同組合(生協)などがおなじみだろう。

株式会社が資本家の利益を第一の目的とするものである一方、協同組合の存在意義は、出資する組合員の利益や価値を最優先とする。Go-opの場合、鉄道の維持に共感する市民が組合員となり、出資や労働を行う。これにより、結果的に組合員の直接的なニーズに合う運営がされやすいのだ。

例えば、どこで列車を走らせるのかという点にも、組合員の意見が反映される。Go-opの鉄道は、長年列車の運行がほとんどなかった交通の便が悪い地域を走る計画である。通常、鉄道はロンドンのような大都市との往復に集中しがちだが、買い物や習い事などで、近隣地域への移動にもニーズが高い可能性は大いにある。こうして組合員の声を取り込むことにより、沿線地域の活性化にもつながることが期待される。

どんな車両を使うのかについても、組合員が意見を述べることができる。当初、Go-opではディーゼル車を使用する予定だったが、組合員の意見を反映し、9トンのバッテリーを搭載した電気車両を採用することとなった。また、駅の電化も進められており、電気自動車や電気バスとの連絡ハブとしての役割も担う予定である。

さらに、赤字を回避するために、利用者かつ従業員である組合員が話し合って方針を決め、納得のいく経営を進めていく点も重要である。運賃体系や利用促進の方法など、決めるべき事項は多岐にわたるが、少なくとも料金の値上げが会社の「役員室」で一方的に決定されることはない。

日本の鉄道運営とイギリスのそれは大きく異なるため、Go-opの挑戦をそのまま取り入れるのは難しいだろう。しかし、この取り組みは、最近注目を集めている協同組合ビジネスをさらに一歩前進させ、利益追求に偏らず、地域社会や環境への配慮を重視する経済への道筋をひらく可能性を秘めているかもしれない。

【参照サイト】Go-op公式ホームページ
【参照サイト】協同組合で鉄道路線の復活を
──フランスRAILCOOPの挑戦
【参照サイト】Groundbreaking train co‑op gets green light for Taunton‑Swindon rail service
【参考文献】小役丸幸子(2014)「英国の旅客鉄道におけるオープンアクセスの現状」、『運輸と経済』第74巻第10号106-109頁。
【関連記事】これからの資本主義のカタチ。デジタル経済における「プラットフォーム協同組合主義」の可能性
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Edited by Erika Tomiyama

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