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社会的連帯経済(SSE)とは・意味

image via Shutterstock/ Ben Von Klemperer

社会的連帯経済(SSE)とは

行き過ぎた利潤の追求による弊害をなくし、民主的な運営により、人間や環境にとって持続可能な経済社会をつくることを目的とする概念のこと。資本主義でも共産主義でもなく、それらに代わる新たな経済の枠組みとして注目され、世界ではラテン系の欧州諸国や南米などを中心に発展している。

「社会的経済」と「連帯経済」を組み合わせた言葉で、Social and Solidarity Economyの頭文字を取って「SSE」とも言われる。

社会的連帯経済の成り立ち

「社会的経済」は、フランスやスペインなどを始め、古くから存在する概念。株主への利益の最大化を目的とせず、社会的目標の達成を中心に、関わるすべての人によって民主的に運営される組織によるもの。一般的に、第三セクターと言われるものがこれに当たり、共同組合、NPO、相互会社、共済組合、財団などがある。農協や生活共同組合、信用金庫、財団法人などの社会的経済を行う組織もこれに該当する。

一方、「連帯経済」は、1980年以降に新自由主義的な考えに対抗するものとして生まれ、欧州や南米を中心に広まった。私的な利益を追求するのではなく、人々の暮らしや地球環境を守ることを軸にした経済活動のことで、例えばフェアトレードやマイクロクレジット、地域通貨、クリエイティブ・コモンズなどが挙げられる。

上述の2つは、それぞれが異なった背景や方向性を持つが、既存の資本主義とは異なる経済活動を目指すという点では一致している。また、SDGsなどとも親和性が高く、国際労働機関(ILO)や国連社会開発研究所(UNRISD)などの取り組みもあり、2010年前後より「社会的連帯経済」として世界的に広まっていった。

社会的連帯経済が果たす役割

2013年、国連は、こうした機関や政府間組織と共に「SSEに関する国連機関横断タスクフォース(UNTFSSE)」を設立。翌年発表したポジションペーパー(公式見解)の中では、持続可能な社会実現のための大事な要素として、以下8つの分野を挙げている。

1. インフォーマル・エコノミー(非公式経済)からディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)への移行
2. 経済と社会のグリーン化
3. 地域経済開発
4. 持続可能な都市と人間の居住環境
5. 女性のウェルビーイングとエンパワーメント
6. 食料安全保障と小規模生産者のエンパワーメント
7. ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(皆保険制度)
8. 金融の改革

また、社会的連帯経済推進者の世界的ネットワークであるRIPESSで採択された憲章では、「経済とは、男女を問わずそれぞれのニーズとその志を満たし、同時に将来の世代が自らのニーズを満たせるようなものでなければならないと考える。」と述べられている。

このように社会的連帯経済は、サステナブルな社会を目指すものとして位置づけられており、『持続可能な開発のための2030アジェンダ』の実現に向けてその存在感を示している。

社会的連帯経済の特徴を持つ組織

こうした新しい経済の流れを作っていく中で、大きな役割を担っているもののひとつに協同組合がある。スペインを始め、ヨーロッパではすでに多くの「労働者協同組合」や「消費者協同組合」が組織され、運営されている。

これらは、組合員自らが出資して事業を経営したり、出資額に関係なく一人一票の原則で、組合員全員が民主的に意見を出し合って運営したりするという特徴を持っている。誰かと競い合うのではなく、お互いに対等な立場で協力し合うことや、個性を尊重し、より人間らしい暮らしを目指すことを目的としているため、関わる人々のやりがいにも繋がっている。

日本でも、2020年12月に「労働者協同組合法」が成立し、2022年10月に施行された。厚生労働省はウェブサイト「知りたい!労働者協同組合法」を立ち上げ、好事例一覧には国内で労働者協同組合として活動する事例を動画で紹介している。2023年5月1日時点で39法人が登録され、介護・福祉関連からキャンプ場まで多様な組織が設立されているようだ。

まとめ

先程紹介したRIPESSの憲章には、以下のような言葉がある。

「社会的連帯経済は『buen vivir(よく生きる)』というパラダイムに根付いている『母なる大地の権利』という概念を取り入れています。これは、単なる功利的な関係ではなく、母なる大地に敬意を払い、調和して人間らしく生きるという先住民族の考え方に大きく影響を受けています」

誰もが人間らしく安心して暮らせる社会を築き、豊かに未来を生きるために、新たな経済への転換が求められているのかもしれない。

【参考サイト】RIPESS | RIPESS Global Vision
【参考サイト】RIPESS | Charter of RIPESS _English_[1]
【参考サイト】UNITED NATIONS | UN-Inter-Agency-Task-Force-on-Social-and-Solidarity-Economy-submission_May2017
【参考サイト】UNTFSSE | UNTFSSE Position Paper – Social and Solidarity Economy and the Challenge of Sustainable Development –
【参考サイト】WORKSIGHT | 世界が注目する資本主義のオルタナティブ「社会的連帯経済」 [廣田裕之]
【参考サイト】集広舎 | 社会的連帯経済とは?
【参考サイト】imidas | 社会的連帯経済」への誘い1 未来を生きるための経済
【参考サイト】SIMI | 社会的連帯経済と社会的インパクト
【参考サイト】知りたい!労働者協同組合法|厚生労働省
【参考サイト】世界が注目する新しい働き方「労働者協同組合」の可能性|厚生労働省




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