競合の大手4社、CO2排出減のビール缶ふたを“同時に”採用。日本の飲料業界を変える一歩に

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気候変動や生物多様性損失への危機感が高まる中、脱炭素や循環経済への取り組みは企業にとって重要度を増している。

一方、その取り組みにブレーキをかけているのが「競合」の存在だ。新たな取り組みにかかる時間やコストによって売上が落ちて、他社に負けることは避けたい……そんな思惑から、環境面の取り組みに消極的になる企業も少なくない。

しかし、それでは根本的な環境問題の解決にはいたらない。日本のビール業界からは、同業種だからこそ手を取り合うことがカギであると示す事例が生まれている。

アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリーの4社が、2024年12月10日、製造時に発生する温室効果ガス(GHG)排出量が約4割少ない缶ふた「EcoEnd™(エコエンド)」を採用することを発表したのだ(※)。2025年2月以降、各社の一部缶ビールに導入される予定である。酒類・飲料業界での大規模な採用は初めてとのこと。

EcoEnd™は、総合容器メーカーの東洋製罐と、アルミニウム総合メーカーのUACJが、2023年12月に次世代飲料缶用ふたとして共同開発したものだ。

これまで酒類・飲料業界では、材料の加工しやすさを確保するため、天然資源由来の新しいアルミニウム(アルミ新地金)を多く使った缶ふたが採用されてきた。さらに、これは素材の抽出に大量の電力を使用。環境負荷の側面から課題となっていた。

そんな中、EcoEnd™は、アルミニウム溶解後の成分調整と製造技術の開発により、品質を保ちながらアルミ新地金の使用量の41%減少、リサイクル原料の割合の75%増加を達成。その結果としてGHG排出量の約4割削減を実現しているのだ。

4社は共通のリリース文で「持続可能な社会の実現に向けて業界をあげて取り組むべく、流通量の多いビール類から『EcoEnd™』を採用する」と、歩みを揃える姿勢を表明した。

環境の取り組みとして他社の一歩先を行こうとするのであれば、一つの企業で資材を占有したり単独で採用したりすることも戦略になるだろう。しかし今回、“業界として”変化を推進していくことが強調されたことは、新たな希望であった。

環境負荷軽減の取り組みは、利益のために隠すのではなく、規模の経済も取り入れながら業界や社会全体で協働して前進させることが本質であるはずだ。

※ 東洋製罐の従来品比

【参照サイト】環境負荷の低い缶蓋「EcoEnd TM」をビール類に初採用|アサヒビール
【参照サイト】環境負荷の低い缶蓋「EcoEnd™」をビール類に初採用 | 2024年 | キリンホールディングス
【参照サイト】環境負荷の低い缶蓋「EcoEnd™」を ビール類に初採用 | サッポロ
【参照サイト】環境負荷の低い缶蓋「EcoEnd™」をビール類に初採用|サントリー
【参照サイト】次世代飲料缶用蓋「EcoEnd(TM)」の量産に向けて、生産体制の構築を完了:グローバル アルミニウム メジャーグループ 株式会社UACJ
【参照サイト】大手ビール4社、GHG排出量4割削減の缶蓋を来春採用――環境負荷低減へ業界挙げ一歩|SustainableBrands
【参照サイト】大手ビール4社が環境配慮型の資材を同時に採用、なぜか – オルタナ
【参照サイト】東洋製罐とUACJの次世代アルミ飲料缶蓋「EcoEnd™」が「The Canmaker Cans of the Year Awards 2024」で3賞受賞
【参照サイト】アルミニウムの原料は何でしょうか? | 中学生・高校生・市民のための環境リサイクル学習ホームページ
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