旅行や出張で飛行機に乗る際、荷物を預けたあとに空港内でお土産を買おうとしたら、その値段に驚く人は少ないだろう。またターミナル内にあるお店は、世界的に有名なブランドも多く、あまりご当地感を感じられず、残念な気持ちになることもある。
そんなモヤモヤを解決できる取り組みがアメリカ・オレゴン州のポートランド国際空港にある。地元ポートランドらしさあふれる飲食店や小売店が集結した新しい空港ターミナルが2024年8月に一般公開されたのだ。
2026年までにオープンする店舗は全て、地元の人たちに愛される“ローカルショップ”だ。ポートランドで大人気のBlue Star Donutsなど8店舗はリニューアルオープンし、新たに15店舗が空港内に登場する。まだ全店舗がオープンしているわけではないが、キオスクとしてお披露目されている店もある。これらの店舗の半分以上は女性または有色人種のオーナーだ。
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オープンするのは、レストランはもちろん、書店、ギフトカード店、衣料品店、ビアホール、カフェなどバリエーション豊かだ。中にはポートランド発でありながら、世界的に人気のある、スポーツ用品ブランドColumbia Sportwearなどの店舗もあり、フライトを待つ時間も楽しくなるだろう。
多くの人が行き交う空港内では、各店舗の売上も順調だ。Fast Companyによると、2012年にポートランドで創業したレザー用品店Oroxの空港店舗の売上は旧市街の店舗に比べて4倍、メーリングリストの登録者も20%増えているという。空港に店舗を持つことで、消費者にポートランドらしさをアピールすると同時に、売上増加にもつながっているのだ。
さらに、空港利用者にポートランドらしさを感じてもらうため、地元のアーティストとも連携し、作品展示や音楽のライブパフォーマンスも実施している。ポートランドの地域芸術文化評議会の協力のもと、施設内には20のパブリックアート作品が展示されており、地域のカルチャーを知ることができるのだ。
ポートランド空港は、話題を呼んだデザインの面においても、ローカルコミュニティに貢献している。空港内の壮大で美しい天井に使用されている木材は、300キロ圏内で生産された地元産の木材で、その約7割がFSC認証を取得した持続可能な森林利用をしている企業だ。同空港のウェブサイトでは、実際に木の生産地を確認することもできる。
ポートランド空港の取り組みは、利用者がポートランドらしいお土産やグルメを楽しんだり、カルチャーを知ったり、存分にご当地感を楽しんだりできる上、ローカルビジネスの売上アップにつながる。オーバーツーリズムが世界各国で問題になる中、訪問者と住民の両方が満足できる仕組みが重要になるだろう。
空港のように大きな規模ではなくても、このような事例が増えていくことを、今後期待したい。
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【参照サイト】ポートランド国際空港(PDX)
【参照サイト】Portland filled its new airport terminal with mom-and-pop stores—every airport should do the same