洗濯機は“長持ち度”で選ぶ?フランスで、家電の「耐久性ラベル」導入

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一般的な大型家電の寿命は、10年前後といわれている(※1)。しかし、たとえば自宅の洗濯機が「あと何年使えるのか」を把握している人は、それほど多くはないのではないだろうか。

2025年4月8日、フランスでは新たに「耐久性指標(Indice de durabilité)」が洗濯機に導入された。これから販売されるすべての洗濯機に対して、商品の価格近くに分かりやすく表示することが義務付けられた。この指標はオンラインでも同様に適用され、価格と同じページかつ同じフォントサイズで表示され、消費者が一目で製品の耐久性を確認できるようにすることが求められる。これは2025年1月からテレビに対してすでに導入されており、今回その範囲が洗濯機にまで拡大した形だ。

たとえば耐久性指標において、洗濯機が10点満点のうち「9.5(緑)」の高評価を受けることで、消費者はその製品が長持ちし、メンテナンスが容易であることを理解できるようになる。

9.5/10(緑)、7.5/10(黄)、5.5/10(オレンジ)、3.5/10(ピンク)、1.5/10(濃い赤)。この評価は、部品の入手可能性や価格、メンテナンスや維持管理のしやすさ、製品の分解のしやすさ、耐久性や摩耗への耐性など、複数の基準に基づいて決定される。

もともとフランスでは、2021年1月の段階でスマートフォン、パソコン、テレビなど家電製品の製品の修理しやすさを10段階で示す「修理可能指数(Indice de réparabilité)」を表示することが義務付けられていた。

しかし、この修理可能性指数はあくまで修理のしやすさに焦点を当てた指標であり、製品全体の耐久性や寿命に関する十分な情報を提供しているわけではなかった。そこで、今回新たに「耐久性指標」として、修理可能性に加えて製品の寿命や使用期間の長さを考慮した総合的な評価を提供するものが導入されたというわけだ。

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この耐久性指標は、主に「修理可能性」と「信頼性」の2つの基準に基づいて算出される。修理可能性は、技術的なドキュメントへのアクセスの容易さや、機器の分解のしやすさ、部品の入手可能性や価格を基に評価。一方、信頼性は、製品の耐久性や摩耗に対する耐性、メンテナンスのしやすさを考慮して判断される。また、商業保証の有無や品質管理プロセスの存在も、信頼性評価の重要な要素として含まれているのが特徴だ。

こうした指標は、市場にどのような影響を及ぼすだろうか。フランスでは、すでに前述した「修理可能性指数」の導入によって、修理しやすい家電製品の売上が活発になっていることが報告されている。実際、2024年には洗濯機全体の売上が4%増加という中、修理可能性指数で10段階中8以上の評価を受けた洗濯機の売上は30%も伸びたというデータがある(※2)

さらに、2022年から冷蔵庫や洗濯機を含む家電製品に加えて、2023年11月には衣類や靴の「修理ボーナス(修理補助金制度)」も導入されていた。これにより衣類の修理件数が1年間で約3倍に増加し、約82万件の修理が行われたという報告もあり、消費者の意識の変化も見られる(※2)

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2016年、持続可能な開発のための総合委員会は、これまで消費者が購入時に十分な情報を得られないことが製品の品質低下を招く原因となっていると指摘していた(※3)

「市場には今、寿命の短い製品のみが販売されており、高価格の製品に対して消費者はその寿命を知らず、長期間使用できるかどうかを不安に感じ、購入を避けている」

今回始まった耐久性に関するデータが公開されることにより、消費者のより長持ちする製品に投資する意欲が高められ、最終的には長寿命の製品が市場に増えることが期待される。それにより、企業には製品設計の段階から、修理のしやすさや部品の入手しやすさ、耐久性といった観点を取り入れる姿勢が求められる。フランスで導入された耐久性指標は、日本企業にも少なからぬ影響を及ぼすはずだ。

※1 消費動向調査 令和5年3月実施調査結果
※2 Allonger la durée de vie des produits : analyse théorique des enjeux économiques et environnementaux.
※3 Bonus Réparation : quel bilan après un an ?

【参照サイト】Indice de durabilité
【参照サイト】英語文書:耐久性指数の表示と計算に関するマニュアル
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