環境意識が高まるにつれて、サステナブルな買い物への関心が高まっている。国内の生活者のうち64.7%が環境に配慮した商品・サービスを購入したいとの意向を持っており、生活者の44.6%は商品・サービスにカーボンフットプリントが表示されていることで購入意欲が高まるという(※1)。
そうした表示を行うエコラベルは、これまで欧州を中心に広がりを見せてきた。企業によるCO2排出量の計測・削減努力を示す認証ラベルや、食品分野の温室効果ガス排出量をA〜Eのランクで示すエコスコアなどが実装されている。
一方、日本ではどうか。代表的なエコラベルが思いつかない人も多いかもしれない。しかし実は、日本でも2024年3月から農林水産省が「みえるらべる」という愛称で、農産物の温室効果ガス削減への貢献を3段階で示すラベルを本格的に運用し始めている。現在、米、野菜、果樹、いも類など23品目の生産段階が対象だ。
生産者は、「農産物の環境負荷低減に関する評価・表示ガイドライン」に従い、簡易算定シートをウェブサイトでダウンロード・記入し、農林水産省に提出すると登録番号が付与され、取り組みに応じた等級のラベルを使用できる。運用開始後、このラベルを表示して商品を販売している店舗は350カ所以上にのぼる。

出典:プレスリリース
さらに、今後はこの「みえるらべる」に、牛乳や肉などの畜産分野も加わる見込みなのだ(※2)。えさの種類やエネルギー使用量、排せつ物の処理方法などが排出量を計算するためのデータになるという(※3)。牛のゲップや排泄物に伴う温室効果ガスの排出が国際的に課題視されており、デンマークでは畜産に特化した炭素税の実施準備が進められているほどだ。
日本全体の温室効果ガス排出量においては、農林水産分野は約4%、畜産のみでは約1%を占める(※4)。一見すると小規模だが、農林水産分野内では畜産由来が約31%と大部分を占めることから(※5)、畜産における脱炭素化の注力は効果的な判断と言えるだろう。
一連の取り組みは、農林水産省の「みどりの食料システム戦略」に基づくもの。環境への影響を考慮した買い物に関心が高まる今、特に日常的である食料品の買い物に働きかけるラベルを皮切りに、食をめぐるシステムそのものの改善が進むことを期待したい。
※1 気候変動と商品・サービスの購⼊に関する⽣活者意識調査(CSVサーベイ 2024年)
※2, 3 環境に悪い肉や牛乳「モーだめ」 温暖化ガス削減量表示へ|日本経済新聞
※4, 5 温室効果ガス排出量の内訳と対策の動向
【参照サイト】環境負荷低減の取組の「見える化」の本格運用がスタートします!|農林水産省
【参照サイト】見つけて!農産物の環境負荷低減の取組の「見える化」 ~温室効果ガス削減への貢献と生物多様性保全への配慮~|農林水産省
【参照サイト】環境負荷低減の取組の「見える化」ラベルの愛称が決定!|農林水産省
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