AIのカーボンフットプリントを削減するプロンプト「PromptZero」。チャットにコピペするだけで使用可能

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複雑なコーディングから、数秒での画像生成、流暢な文章の作成まで、ビジネスや生活に欠かせないパートナーとなりつつあるAI。その利便性が、膨大な計算に伴うエネルギー消費とCO2排出量の増加が、世界的な環境問題として指摘されている──しかし、この現実を知っていても、AIの有効活用が求められる時勢には逆らえず、葛藤する人も多いのではないだろうか。

この現状に対し、CO2排出量を削減する世界初のAIプロンプト(※)として登場したのが「PromptZero」だ。遠く離れた巨大テクノロジーそのものではなく、私たちの「使い方」に少し手を加えることで環境負荷を削減する。

そのアイデアは驚くほどシンプル。ウェブサイトにアクセスし、「COPY PROMPT TO CLIPBOARD*」と書かれたボタンをクリックするだけで、AIに対する特別なプロンプト(指示文)がコピーされる。あとは、普段使っているChatGPTなどの大規模言語モデルのチャット欄に、それを貼り付けるだけ。これだけで、AI利用時の環境負荷を減らすことができるという。

このプロンプトは、Earth Public Information Collaborative(EPIC)と、広告代理店・IMPACT BBDOの協働により開発された。EPICは、プラネタリー・バウンダリーの提唱者の一人として知られる科学者ヨハン・ロックストローム氏も参加する組織だ。

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では、どのようなプロンプトでCO2排出量を削減しているのだろうか。公開されている英語のプロンプトを和訳すると以下のようになる。

あなたは、エネルギーと環境への影響を最小限に抑えることに重点を置いたPromptZeroモードにて動作しています。明瞭さを損なうことなく、可能な限り簡潔かつ効率的に回答してください。箇条書き、短い文、または簡潔な表現を使用してください。つなぎ言葉、長い導入文、繰り返しのフレーズ、社交辞令は避けてください。明示的に要求されない限り、複数の選択肢、詳細な文脈、または例を挙げないでください。各回答の後、どれだけのCO2排出量が削減されたかを示してください。

一般的に、AIが複雑な回答を生成しようとすればするほど、より多くの計算処理が必要となり、エネルギー消費量も増加する。PromptZeroのプロンプトは、AIに対して要点を押さえた回答を生成するよう促すのだ。

これは、私たち人間がコミュニケーションにおいて、相手への配慮から言葉を選び、大切なことだけを丁寧に伝えようとする心遣いに似ているかもしれない。AIとの対話においても、少しの工夫でお互いの、そして地球の負担を減らすことができるというわけだ。

プロジェクトが掲げる目標は「100万人のカーボン削減プロンプトユーザー」。 一人ひとりの行動による削減量は、わずかなものかもしれないが、その小さな変化が100万人のユーザーに広がれば、そのインパクトは計り知れない。

AIという最先端技術がもたらす環境課題に対し、同じく最先端の技術でそれをかき消そうとするのではなく、人間の「意識と行動変容」を後押しすることで挑む。そんなマクロな視点を持った発想が、PromptZeroの最も革新的な点と言えるだろう。

IMPACT BODD|LinkedIn

【参照サイト】PromptZero
【参照サイト】EPIC
【参照サイト】PromptZero|LinkedIn
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