気候変動の影響が深刻化するなか、50年後、100年後の地球がどんな状況になっているか想像できる人はどれだけいるだろうか。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告によると、地球の平均気温は2100年までに最大5.7度も上昇する可能性があるという(※)。しかし、どれほど明確な数値が示されようとも、それがどのような未来を意味するのかを感じることは難しい。
そんな数字だけでは分からない未来を可視化し、理解を深めてくれるのが、フランス発のオンラインゲーム「FutureGuessr(フューチャーゲッサー)」だ。世界で6,500万人もがプレイする、Googleマップを使った場所当てWebゲーム「GeoGuessr」から着想を得ている。
FutureGuessrではまず、プレイヤーがGoogleマップのストリートビューのような仮想空間にランダムに放り込まれ、そこが世界のどこなのかを推測する。ただし、そこは「気候変動で一変した」2100年の世界。IPCCの最新データと気候科学に基づいて気温上昇や海面上昇、生物多様性の損失をAIを用いて反映し、実在する建造物や地理情報に合わせた未来を再現している。
ゲームの舞台は、もう一つ存在する。同一地点の自然破壊が進んだ世界だけでなく、野心的な気候変動対策が実践された未来も可視化しているのだ。その強烈なコントラストを通して、プレイヤーに対し、知識だけでは得にくい実感とともに「どちらの結果にもつながりうる“今”を、自分はどう生きるべきか」と問いかけている。
ゲームの中では、サバンナと化したアマゾン、海面上昇で水没したモルディブ、崩壊する南極の氷棚、消失したメール・ド・グラース氷河など、地球がどう変わりうるかがリアルに描かれている。AIはこのプロジェクト専用に開発され、カーボンフットプリントを抑えるためローカル環境で運用。開発体制にも環境配慮が徹底されている。
企画を主導したのは、フランスのクリエイティブスタジオ・Artefact 3000。環境保護ネットワーク・Réseau Action Climatと協力し、教育的で視覚的、そして心理的なインパクトをもたらす啓発プロジェクトとして「FutureGuessr」を世に送り出した。
2100年、あなたが今いる場所はどうなっているか──その想像は、単なる妄想やファンタジーではない。今を生きる私たちが「地球の未来への責任」を自覚するための大切な問いだ。その一歩をゲームという身近な形で後押しする「FutureGuessr」は、これからの新しい教育ツールになるかもしれない。
※ 地球温暖化の影響予測(世界)|全国地球温暖化防止活動推進センター
【参照サイト】Future Guessr
【参照サイト】FutureGuessr: Online game of anticipation to visualize our planet disrupted by climate change
【参照サイト】It’s 2100. Can you guess where you are?|TrendWatching
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Edited by Natsuki