身体知から、流域を再生する。尾鷲の森でNext Commons Labが育てる地域の「守り手」たち

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「上からも下からも雨が降るまち」と呼ばれ、日本でも有数の多雨地域である三重県尾鷲市。雨が急峻な山肌を打ち、森の養分を含んだ水となって川を下り、目前の海へと注いでいる。

霧がかった森の中では、一台のDEFENDERが林道を進む。そこには、山から海へとめぐり続ける水の役割を心得て、自然を再生する人々の姿がある。彼らは、壊れかけた生態系を自らの技術で修復し、この土地で暮らし続けるための基盤を守っている。

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──これは、実際に尾鷲の森で生まれている光景だ。効率化の波の中で失われてきた「自然を再生する技術」を市民の手に戻すこと。これを、ポリクライシス(複合危機)時代を生き抜くための手段と捉え、人々は確かな希望をたぐり寄せようとしている。

そんな静かなる変革の担い手を育てようとしているのが、一般社団法人Next Commons Labだ。

彼らが提唱する新しい形の自治組織・Local Coopは、流域再生に特化した身体知としての技術獲得を目指す人材育成プログラム「Local Regen School」を立ち上げようとしている。英国発祥のアドベンチャー・ブランドであるDEFENDERが2025年4月に立ち上げた、地域の自然保護および人道支援活動のヒーローを支援するグローバルアワード「DEFENDER AWARDS」を2026年1月に受賞したことでも知られるこのプロジェクトは、単なる環境保全の枠を超え、自然と人と地域のあり方を再定義しようとしている。

なぜ今、彼らは仕組みやサービスではなく、あえて「人」を育て、「流域」という単位に光を当てるのか。ファウンダーの林篤志氏に、立ち上げの背景にある課題意識と、身体性を取り戻す学びのデザイン、そしてその先にまなざす100年後の自治の兆しを聞いた。

話者プロフィール:林 篤志(はやし・あつし)

Next Commons Labファウンダー。自治体、企業、起業家など多様なセクターと協働し、新たな社会システムの構築を目指して活動。ポスト資本主義社会を具現化するための社会OS「Local Coop」など、多様なプロジェクトを展開中。

この土地で生きるために「自治」を取り戻す

Next Commons Labはこれまで、日本各地でローカルベンチャー事業を展開し、多くの起業家を輩出してきた。しかし、彼らが目指しているのは、国からの交付金や一過性の観光ブームに依存する「地方創生」ではない。

彼らが提唱するのは、エネルギー、食料、交通、そして地域の自然環境といった生活基盤を、住民自らが主体となって意思決定する新しい共同体システム「Local Coop」だ。これは、行政任せでも、市場任せでもない、コモンズ(公共財)の再構築への挑戦でもある。

行き過ぎた資本主義が限界を露呈させ、気候変動や人口減少が進み、AIの不透明なパワーが台頭する現代。先の見えない中で、林氏は「生きる」ことへの重心が大きくなっていると語る。

「個人の単位では変えることのできない凄まじい変化に対して、地域やコミュニティという単位で生き抜いていくために、誰かに任せっきりにせず自分たちで作っていく自治の仕組みや考え方が、Local Coopだと捉えています。

そこでの第一義は『存続する』ということ。どれぐらい売上が上がるかという視点ではなく、数十年単位でその地域が存続していけるかどうかが重要なのです。まちづくりで儲かったとしても、その地域で暮らし続けられなければ意味がない。『この場所で暮らし続けたい』という思いをないがしろにせず、生きることの本質的な在り方を追求していくことが、社会インフラとしてのLocal Coopなのだと思います」

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危機や衰退が叫ばれる今だからこそ、共に支え合う能動的な関わり方が、生きる方法の一つとなってくるのだ。では、その共助を通じて「何を」維持し、生み出すことで個人の「生きる」を支えることができるのだろうか。

「『自助・共助・公助』と言われる中の自助も公助も危うい時代で、ぽっかり空いてしまっている真ん中の部分を、共助や新しいテクノロジーをうまく使いながら埋め合わせていくことが、Local Coopのアプローチです。その共助で維持していくものは、コモンズ。その形は地域や状況によって様々で、道路や行政サービスに代わるインフラもあれば、暮らしを根本的に支える自然もあります。

しかし現代では、自治をアウトソースしてきた結果、課題も引き起こしているようにも思うのです。例えば森林の管理、ケアを誰かに任せっきりにすると、自然を守るための技術が失われていく。つまり、自分たちの力で身近な社会を良くしていくには、技術や知識を取り戻していくプロセスが必要だと思っています」

目の前の暮らしを、自然を、社会をより豊かにする技術と知識がないようでは、自治も共助も実現しない。だからこそ「自治の手段」を取り戻そう──そんな地域再生の人材に光を当てたプログラムが今、まさにLocal Coopから全国へ広がろうとしている。

雨と森林と海のまち尾鷲で、「身体知」から流域を再生する

Local Coopは今、尾鷲市で流域再生の取り組みを進めている。これを発展させ、流域再生専門の人材育成プログラム「Local Regen School」を立ち上げるのだ。コモンズとしてまずは「流域」に着目した形になるが、なぜまちではなく流域という区切り方に光を当てるのだろうか。

「僕たちは今、短絡的になりがちな価値軸を『いかに多元的に扱うか』に重きを置いて活動しています。そうでないと経済合理性を重視する現状から変われません。

その上でなぜ流域かというと、当然ですが、自然は循環しているから。流域とは、山が保水し、水が湧き出て、海に辿り着くという『ランドスケープとしての流域』だけではありません。そこには、大雨の時に水を保水をしてくれて、山のミネラルを海に運んでくれる機能があります。流域単位で文化やお祭りが残っているなど、民俗学的な意義も根強い。つまり、流域を中心に色んな種が生きることで相互作用が生まれるのです」

人間が引いた境界線とは無関係に、水がめぐり、栄養が運ばれ、命が連鎖していく。「ここからは隣町だから」と線を引いて上流と下流がそれぞれ独りで自然を再生(Regenerate)しようとしても、原因と結果は結びつきにくい。だからこそ、この流域という単位が大切なのだ。

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「現在語られているリジェネラティブな(再生型の)視点や方法論は、どうしても概念が先行してしまいます。なので、Local Regen School(ローカル・リージェン・スクール)では、プログラム名に『ローカル』とあるように、参加者それぞれに自分のフィールドを持っていただきたいのです。例えば、自分が住んでいる地域や、東京在住だけど通っている地域の山や森林で、流域の再生という軸をしっかり持って活動を広げていただきたいと思っています」

ここで教わるのは、大きな重機を使った土木工事ではない。複数人が集まれば、地域の素材を使って自然を再生し、守ることができる伝統的な土木工法だ。

「スクールでは、再生や生態系の知識、流域維持の実例、アクションの環境価値、新しい経済価値の生み出し方などかなり実践的な内容を扱います。特に、頭で考えてビジネスを回すだけではなく、『身体性』を通じて流域の再生を理解している人を増やすために、現場で実際に森や流域の整備をする実習やフィールドワークを複数回用意しています。

数ヶ月間にわたって頭と身体の両方をしっかり使うことで、スクール終了後に、自分なりのフィールドでの再生プロジェクトの実践の見立てがある状態を作りたいなと考えています」

より早く成果をあげるほど良いとされる短絡的な現代経済は、自然の再生と相入れないものだと、林さんは語る。ESG投資TNFDのように人間が自然の再生を評価するならば、雨が降り、水が山をくぐり、川を流れ、海で揺れ、再び空へ戻る緩やかな時間軸へと、社会や経済の歩みを調え直すことが欠かせないだろう。

DEFENDERと共に世界へ問う、人と自然の相互作用

Local Regen Schoolにとって力強い追い風となったのが、英国のアドベンチャー・ブランドであるDEFENDERが主催する「DEFENDER AWARDS」だ。

このアワードは、環境保護団体や人道支援組織、生態系の回復などに取り組む小規模な非政府・非営利団体を対象として、DEFENDERが2025年に初めてグローバルに募集したもの。2026年1月、同団体は「Land(環境保護・保全・再生)」の部門から日本代表に選出された。

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「初めてDEFENDER AWARDSの募集内容を見たときに『企業がここまで自然に寄り添う時代になったのか』と驚いたところもあって。僕たち自身が目指すこと、実践していることと、ぴったり合うような感覚がありました。同時に、エントリーを通じて、流域の単位で捉えた里山・里海などの日本独自のアプローチや思想が、グローバルでも評価されるかを確かめたいという思いもありました。

現在の自然保護は、自然を人間の外に捉えて、人間が立ち入らないようにする西洋的な自然観に近い側面が今もあるように思うのですが、私たちのプログラムは、むしろ日本固有の里山的な発想で人的介入をしていくことで、生態系の回復を促すアプローチです。グローバルなアワードだったからこそ、その評価を確かめることがエントリーのモチベーションの一つになったと思います」

Local Regen Schoolが掲げる「流域再生」というテーマ、そして100年後を見据えた長い視点で自然と向き合う姿勢は、選考過程でも共感を呼び、今回の受賞につながったのだ。そしてすでに、受賞団体へのサポートの一つであるDEFENDERの車両1台が提供された。

「テストランで初めてDEFENDERに乗って、DEFENDERブランドの方々が『どんな悪路でも走れます』と言っていた理由がよく分かりました。高い走破能力を利用して力強く進むことができ、安定感もある。車としての性能をすごく感じて、正直驚きました。

流域再生の現場には、障害物が多くあります。 路面状況が決して良くないオフロードの山に入っていくこともあるので、今後その現場にスクールのメンバーを連れて行く場面で役立ちそうです。すでに尾鷲の現場でも使っているように、資材を運ぶ場面でも活用しています」

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DEFENDERがもたらす価値は、実用性だけではない。「現場にDEFENDERがあること」そのものが、携わる人の姿勢に影響を与えていく可能性も見えているようだ。

「今後Local Regen Schoolを立ち上げるときにも、DEFENDERが象徴となることで現場がどこかクールなイメージになる一面があると思っていて。DEFENDERにはブランド力があるので、ただ泥臭くて大変な現場ではなくて、むしろ世界が向き合う非常に大きな問題をローカル単位で解決に挑む人たちの最前線の現場なんだということを感じていただく。この車両が、そんな媒介になるのではないかと思っています。

僕たちだけが何かをやってきたのではなく、一つひとつの現場で一緒に作業をしてきた方、流域再生の専門家の方、色んな思いを持ったプロの方たちが関わっています。それぞれは非常に小さな現場のアクションですが、それらが可能性のあるプロジェクトとして世界から評価されることが、今後現場に携わる人たちの活動や向き合い方にも影響を与えるだろうと思います。その可能性やチャレンジを、DEFENDERを介して発信していくことが、僕たちの大きな役割の一つなのだと考えています」

100年後の「自治」を、足元の流域から設計する

流域再生の専門家が、日本に点在する未来。それは、今を生きる土台を作り、地域の未来を描き出せる人材が育つということ。ただし林さんは、地域の“英雄”のようなリーダーを育成しようとしているのではない。

「生態系の回復やカーボンクレジットの創出を通じた売上など、流域再生の経済的価値を再び流域再生に活用するのか、次世代の教育に活用するのか、はたまた森で生まれた価値を海に還元するのか。こうした意思決定の過程を含むオーナーシップを、地元を中心とした『共同体』が持っていることが重要です。

生み出された価値を、何に、どう再分配するかは、Next Commons Labを含めて、外の人間が決めることではありません」

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どこまで行っても、再生の目的は自らの力で生きることであり、その時間軸は数十年から100年の単位であることを忘れてはならない。DEFENDER AWARDSを経てNext Commons Labが得た人、ブランド、世界との繋がりも、すぐには成果が実らなくとも長い年月の中で活動のレジリエンスを高めることだろう。

流域を守る身体知としての技術を、人が、地域が、取り戻すこと。そんな足元からの自治再興が、始まりつつある。

【参照サイト】DEFENDER AWARDS
【参照サイト】一般社団法人Next Commons Lab
【参照サイト】Local Regen School
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