新型コロナウイルス感染症の拡大による外出自粛に伴い、おうち時間を利用して新しいことに挑戦する人が増加している。ギターなどの楽器やランニングといったスポーツ、絵画などを始める人がいる中、今自宅でのガーデニングに夢中になる人が出てきている。米国のある種会社では売上げが昨年3月に比べ300%増加。イギリスでも野菜やハーブを栽培するための大型コンテナが昨年同月比で8倍もの売れ行きだという。そんな中、日本でも人々にガーデニングを楽しんでもらおうと様々なプロジェクトが始められた。
おうち時間に何かを植えてみたい!と考える読者のために、今回は2つのプロジェクトを紹介する。
grow「#おうちでたねまき」プロジェクト
1つ目はgrow「#おうちでたねまき」プロジェクト。
このプロジェクトは、自給自足を超えた“共給共足”の社会づくりをめざす活動「grow」 の1つ。東京都渋谷区にあるコミュニティ農園「grow FIELD EBISU PRIME」で栽培した野菜から自家採取した種を中心に、希望する人に無料で配布する取り組みがスタートした(送料別)。野菜を育てる輪を広げたいという思いで始まったプロジェクトだが、他にも同プロジェクトが伝えたいメッセージがある。
ここで配られる固定種とは、「多くの株の中から、その品種の特徴がよく現れた株を選抜してタネをとり、栽培を繰り返すことででき上がった品種」を指す。全国で唯一、固定種のタネのみを扱う種苗店である「野口のタネ/野口種苗研究所」の野口勲さんは、種を植えてまた種を取り、その土地にあった作物をつくっていく重要性を強調する。というのも、その土地の微生物と共に育った植物が、それを食べた人の身体をその土地の風土や気候に合った状態にしてくれる、「身土不二(しんどふに)」であるからだ。しかしながら今、F1(エフワン)とよばれる一代限りの種が増えた結果、ミツバチの大量失踪といった問題が起こっている。
5月現在、同プロジェクトがおすそわけをしている種は、スイートバジルとルッコラの2種類。希望すると2種類のうちどちらかの種が送られてくる(種は無料。送料は全国一律170円。詳しい応募方法はページ下参照)。「タネから育ててまたタネをとる」という活動でもあるため、種の蒔き方から採種の仕方までアドバイスをもらうこともできる。
「自給自足を超えた “共給共足”とは、言い換えると『みんなでつくってみんなで食べること』。海外では既に、家庭菜園や農業への関心が高まっていて、ライフスタイルの一部になっています。日本でも野菜をみんなで楽しく育てて、みんなで食べるという “カルチャー” を育てていきたいですね」と同プロジェクトを手掛けるプランティオ株式会社の広報担当である半田景子さんは言う。
誰かと一緒に食べるとご飯がおいしくなる気がするが、みんなで種から食材を育てるとより一層美味しくなりそうだ。
「みつばちかだんプロジェクト」
2つめは、農民連食品分析センターが呼びかける「みつばちかだんプロジェクト」。近年、減少が懸念されているミツバチのために蜜源と花を増やす目的で始められた。ネオニコチノイドなどの農薬の使用や、宅地化によるミツバチの餌である蜜源の減少、単一作物の栽培の拡大によって、ミツバチが年間を通して安定的に蜜を得るのが難しくなっていることが原因として挙げられ、研究が進んでいる。
「ミツバチが採蜜に出かけられる最大距離は2kmぐらい。でも2kmも飛んだらもうヘトヘト。蜜源が減り、その生態への影響がわかってきた今日、ほんのちょっと種を播いてあげることが、ミツバチを助けることにつながるかもしれません。花壇を訪れるミツバチとの出会いは、生態への興味だけでなく、なぜミツバチが減少したのかという、私たちの社会のあり方を考えることにもつながっていくはずです」と、農民連食品分析センターの八田純人さん。
ガーデニングは、「みんなでつくってみんなで食べる」喜びを感じさせてくれるだけでなく、ミツバチの減少などの問題から自然との付き合い方を考えるきっかけにもなるだろう。おうちで過ごすことが多くなったこの機会に、小さな命の循環をはじめてみてはどうだろうか。
<「#おうちでたねまき」プロジェクト応募方法>
「grow by PLANTIO 」FBページへの「いいね」、Twitterアカウント、Instagramアカウントのフォローをし、こちらのページの一番下にある「タネを取り寄せる」をクリック。必要事項を記入の上、申し込みを行う。1から2週間で種が送られてくる。
<みつばちかだんプロジェクト>
種の購入はこちらから(1袋180円)
<野口のタネ オンラインショップ>
冒頭にご紹介した「野口のタネ/野口種苗研究所」のオンラインショップ。ここでも様々な固定種の野菜の種や書籍などを販売している。
【参照サイト】産経新聞 新型コロナでかつてない家庭菜園ブームの欧米 戦時下の「勝利のガーデン」復活
【参照サイト】時事通信社 「Stay Home」でガーデニング市場に大きな変化!海外では注文数が昨年比8倍の商品も
【参照サイト】grow journal
【参照サイト】みつばちかだんプロジェクト