CSR報告をもっと楽しく。ハイネケンが考えたゲーミフィケーション

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「せっかく時間とコストをかけてCSR報告書を発行しても、なかなか読んでもらえない。」企業のCSR担当者から聞くことがとても多いのがこの悩みだ。いくら自社が社会や環境にポジティブな変化をもたらす活動に取り組んでいたとしても、それが投資家や消費者、従業員といったステークホルダーにしっかりと伝わらない限り、CSRが企業にもたらす利益は半減してしまう。

そんな課題意識を背景に、最近では企業のCSR報告を取り巻く環境も変わりつつある。ただ冊子を発行して配るだけでは効果が見込めないことに気づいた一部の企業は、いち早くCSR報告のデジタルシフトに取り組み始めた。今ではグローバル企業の多くがウェブサイトを活用した報告はもちろん、ソーシャルメディアを活用したステークホルダーと双方向のコミュニケーションがとれる仕組みづくりや動画の活用、リアルタイムレポーティングなど新たな領域に積極的に取り組んでいる。

本日ご紹介するオランダのビール醸造ブランド「ハイネケン」も、そんな会社の一つだ。ただし、同社が他社と大きく違うのはそのやり方にある。ハイネケンがステークホルダーに少しでも自社の取り組みに興味を持ってもらおうとCSR報告に取り入れたのは、「ゲーミフィケーション」の手法だ。

ハイネケンUSAは、「Brewing a Better World(よりよい世界を醸造する)」という理念のもとで取り組んできたCSR活動の成果を少しでも多くの人に知ってもらおうと、オンラインでのCSR報告をオンラインゲームに変えてしまった。

ハイネケンのゲーム

Image via Heineken

読者は複数のステージに分けられたゲームを楽しみながら、水の節約やCO2排出量削減、コミュニティへの貢献といった同社のCSR活動の内容と成果を知ることができるようになっている。さらに、ゲーム参加者が1,000名を超えたら5万米ドルをClosed Loop Foundationに寄付するというコミットメントまでついている。

この新たなCSR報告のポイントは、「ゲーミフィケーション」という手法を用いてエンゲージメントを作ろうとしていることではない。大事なことは、ハイネケンは自社にとって重要なターゲット顧客である20、30代の男性にとって何が最も効果的なコミュニケーションなのかを突き詰めた結果、「ゲーム」という手法を選択したという点だ。

CSRコミュニケーションの対象は投資家から消費者、従業員、地域社会まで幅広く、「マルチステークホルダー」と言われることもある。一方で、よりコミュニケーションの質を高めるためには、ターゲットを明確にし、絞り込むことが不可欠だ。

この内容を誰に伝えたいのかを明確にすれば、おのずと最適なコミュニケーションの手法も決まってくる。ハイネケンの場合、自社の成果を最も伝えたいステークホルダーは同社の主要な顧客ターゲットである20、30代の男性だった。デジタルネイティブとも呼ばれるこのミレニアル世代の男性にとって、ゲームは子供の頃から親しんだ遊びであり、見るだけで自然と興味が湧く対象なのだ。

今回のゲームの以前から、ハイネケンUSAはCSR報告において斬新な取り組みを展開していた。2015年のCSRレポートではデトロイトのミュージシャン、‘Let’s Get Frank’ Kevin ‘Blaxtar’ de Randamie氏を起用して、自社の取り組みをラップ調のビデオを制作し、公開した。下記のビデオはCSR系の動画としては珍しく、13,000回以上の視聴回数を稼いでいる。

CSR報告というと地味で分厚い冊子のイメージを思い浮かべる方も多いかもしれないが、そこに少しでも新たなアイデアが加われば、より多くの人に優れた取り組みが伝わり、結果としてよりサステナブルなブランドを構築することができる。CSRに関わる担当者の方はぜひ同社の事例を参考にしてみてはいかがだろうか?

(※画像提供:Ozgur Guvenc / Shutterstock.com

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