中国やインドをはじめ、世界中で問題となっている大気汚染。気候変動の原因ともなっているこの深刻な問題の改善のために我々が思いつくことと言えば、「大気中から汚染物質を取り除く」「そもそも汚染物質を生み出さない」といったものだ。これらは「マイナスをゼロにする」といういたって普通の思考だが、そこからもう一歩踏み込んで、「マイナスをプラス」に変えようと取り組んでいる非常にユニークでクリエイティブな企業がある。
大気汚染の改善と同時にプロダクトを創り出すというまさかの組み合わせでイノベーションを起こしている企業、それが、オランダ・ロッテルダムに本拠を置く「Studio Roosegaarde」だ。オランダは環境面における革新的な取り組みが多い国として知られているが、また新たにユニークな事例が生まれている。
オランダのアーティストでありイノベーターでもあるDaan Roosegaarde氏が率いる「Studio Roosegaarde」が提案したのは、何と大気から吸い込んだスモッグを宝石に変えるという方法だ。
Studio Roosegaardeが手がけるSmog Free Projectは、風力をメインに駆動されるタワーを通じて汚染物質を吸収し、周辺の大気汚染レベルを改善するというものだ。このスモッグフリータワー、水ボイラーと同じ量の電気を使用し、1時間あたり30,000立方メートルの空気を浄化するという。このタワーは、2016年9月に中国の北京に設置され、汚染から解放された未来のための「グローバルなパートナーシップ」をイメージしてデザインされた。
スモッグフリータワーは、有害な浮遊粒子を引き付けるプラスイオンを空気中に分配し、電流を用いて汚染された空気を汲み上げる。この作用により引き込まれた空気が、タワー内の負の電荷により汚れを剥ぎ取られ、きれいな空気のみを残して排出されるのだ。
そして、この分離されたスモッグは収集され、小さなキューブに圧縮される。これがSmog Freeジュエリーのデザインとなって生まれ変わるという仕組みだ。限定品としてリングやカフス、キューブなどが揃っており、Smog Freeジュエリーのコレクションは同スタジオから直接購入できる。指輪の価格は250ユーロ。さっそくこの指輪をエンゲージリングとして贈った男性もおり、同スタジオのHPで紹介されている。
排除すべき汚染をクリエイティブな発想で新たなプロダクトへと変換し、同時に問題をも解決する。今回のSmog Freeジュエリーもそうだが、他国では、自動車の排気ガスでインクを作り、アーティストがそれを使用し表現をするという事例もある。
世界が抱える環境問題はとどまる所を知らないが、発想次第でその原因となる汚染物質を人々に幸せな気分を与えるプロダクトへと変身させることもできるのだ。Smog Freeの事例は、世の中に無駄なものなど一つもないと教えてくれる。これから先にも現れるであろう、新たなアイデアに期待したい。
【参照サイト】Smog vacuum cleaner turns pollution into jewelry
(※画像:Studio Roosegaardeより引用)