今、世界では毎年人間のために生産された食糧の約3分の1が、消費されることないまま廃棄されているという事実をご存じだろうか?その量は1年あたり約13億トンにものぼり、特に日本やアメリカをはじめとする先進諸国では、まだ食べられる状態の食品が大量に捨てられている。
また、食糧の廃棄は資源の多大な浪費となるだけではなく、埋め立て廃棄によるCO2排出にもつながり、気候変動にも影響を及ぼしている。
一方で、世界では全人口の9人に1人にあたる約7億9500万人もの人々が健康な生活を送る上で十分な食糧を手にできずに飢餓状態に陥っており、これらの人々は気候変動による悪影響を受けてさらなる苦難を強いられているのだ。
貴重な資源を消費して生産した食糧を大量に捨てている人々がいる一方で、生きるために最低限必要な食糧さえ手に入らない人々がいる。この世界が抱える大きな矛盾を解決しようと、新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいるスタートアップが米国マサチューセッツ州のケンブリッジにある。
マサチューセッツ大学やハーバード大学など世界に名だたる大学が存在するケンブリッジではじまったのは、レストランの売れ残りメニューを格安の割引価格で購入することができるアプリ「FoodForAll」だ。
アプリの仕組みはとてもシンプルで、レストランの売れ残りメニューを安く買いたいユーザーと、売れ残った食品を廃棄するのではなく、少しでも消費者に販売してロスを減らしたいレストランを結びつけるというものだ。
ユーザーは、ログインするだけで売れ残りメニューを販売している周辺のレストランを探すことができる。気に入ったメニューがあれば、オンラインで決済し、あとは注文したメニューをレストランに受け取りに行くだけだ。受取時間はレストランの閉店間際に指定されているケースが多く、ユーザーは定価の最大50~80%割引で商品を受け取れる。
FoodForAllは現在ユーザーをケンブリッジに限定してテスト運用中で、参画しているレストラン数は約30程度にとどまっているが、2017年7月からはボストン市内やニューヨークへとサービスを拡大予定だという。拡大に向けてキックスターターを活用したファンドレイジングも行っており、既に5万米ドルの調達にも成功している。
FoodForAllは少しでも食品を安く手に入れたいユーザーと、廃棄をなくして売上を少しでも増やしたいレストラン、そして食糧廃棄の削減により恩恵を受ける社会という三者全員がハッピーになる仕組みのアプリだ。
FoodForAll以外にも、英国の「TooGoodToGo」やカナダの「FlashFood」、フィンランド発で今年の7月に米国にも進出した「BuffetGO」など、食糧廃棄の削減に向けてレストランとユーザーを結びつけるサービスは世界中で広がりつつある。
これらのサービスが互いに競合しながらも共通のゴールを持つ同志としてユーザーを拡大していくことで、先進国を取り巻く食糧廃棄問題が少しでも解決に向かうことを願いたい。
【参照サイト】FoodForAll
【参照サイト】Kick Starter “Food for All: Help, Save & Eat”
【参照サイト】FAO「世界の食料ロスと食料廃棄」